巨人のM点灯阻止!吉見 稲葉コーチに手向けの完投勝利

[ 2012年8月16日 06:00 ]

<中・巨>完投で9勝目を挙げた中日・吉見はファンとタッチ

セ・リーグ 中日6-1巨人

(8月15日 ナゴヤD)
 思いがあふれ出た。巨人のマジック点灯を阻止する価値ある勝利。しかし、そのことよりも中日・吉見の脳裏をよぎったのは恩師の言葉だった。

 「“しっかりと下(半身)を使って、足を移動させなさい”。これをいつも言われていた。頑固な人でしたが、選手のことを本当に見ていてくれた人でした」

 11日に稲葉2軍投手コーチが脳内出血のため、63歳で急逝。この日、名古屋市内で行われた葬儀・告別式に出席後、球場入りした吉見は万感の思いで登板。9回1失点の力投で重要なマウンドを1人で守り抜いた。稲葉コーチが亡くなった日からチームは3連敗。ようやく白星をささげられた。

 恩師の「遺言」通りの投球だった。初回1死満塁。村田をこん身の内角シュートで遊ゴロ併殺に打ち取るとリズムを取り戻した。下半身主導の投球フォームで低めに球を集め、凡打の山を築いた。「マジック阻止をしようと思ってやっているわけじゃないし、巨人に勝って他に負けたら意味がない。僕は集中力、テンションを上げてやっていくだけです」と普段通りの投球で巨大戦力を手玉に取った。

 心残りがあった。同コーチの孫のために球団マスコット「ドアラ」の人形をプレゼントすることを約束していた。11日にナゴヤ球場で会った際にドアラを自宅に忘れて渡せず、その日の午後、帰らぬ人となった。「もう会えないですが、白星という形でいい報告はできると思います」と故人をしのんだ。

 登板前日の14日。通夜に参列し、孫にドアラをプレゼント。遅ればせながら約束は果たした。これでナゴヤドームでの巨人戦は10年4月28日以来、7連勝。今季9勝目で規定投球回もクリアした。「稲葉さんに教えてもらった大事なことは、後輩にも伝えていきたい」。故人の言葉、思いを胸に、吉見は全力で右腕を振り続ける。

 ≪ナゴヤドーム13連勝≫吉見(中)が1失点完投で9勝目。完投勝利は今季4度目(2完封)だが巨人戦では4月19日に次ぐ2度目。巨人相手に今季2度の完投勝利は吉見だけだ。また、ナゴヤドームでの巨人戦は10年4月28日から7連勝。巨人戦に限らずナゴヤドームでは昨季8月19日広島戦から13連勝となった。13連勝中の防御率は0・90と安定。この日は阿部のソロ本塁打による1失点に抑えたが、同球場では7月15日巨人戦から34イニング連続で適時安打を許していない。

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2012年8月16日のニュース