栗山先生が大分析!風読んだロッテが優位に

[ 2010年11月3日 13:15 ]

 【ロッテ7-1中日】千葉マリン特有の風が明暗を分けた。ロッテが2勝1敗と勝ち越した日本シリーズ第3戦。スポーツキャスターの栗山英樹氏(49)は投手にとっての向かい風を地の利のあるロッテ・渡辺俊が完ぺきに生かし、中日・山井は持ち味を殺されたと指摘した。渡辺俊は風の影響を受けやすいカーブを見せ球に、小さい変化のシンカーを勝負球にして1失点完投。一方の山井はスライダーが風で変化しすぎて崩れた。本拠地の特異性を最大限に生かしたロッテが優位に立ったと分析した。

【試合結果


 千葉マリンは12球団の本拠地で最も特異だ。その最大の特徴が海から吹き付ける強い風。この日は試合開始の時点で風速5メートルの風がバックスクリーン方向からホームベースへ吹いていた。その風はバックネット裏のスタンドに当たってはね返り、投手にとっては向かい風。これを味方に付けられるか否かが、大事な第3戦の勝負の分かれ目だった。

 満を持した登板でマリンの風を有効利用したロッテ・渡辺俊 ナゴヤドームでの第2戦先発も考えられたサブマリンは本拠に戻るまで待って第3戦に先発。すべては地の利を最大限に生かすためで、この日の登板の意味を踏まえてマウンドに上がった。投手にとっての向かい風は変化球に最も影響を与え、普通の球場よりも変化が大きくなる。屋内のナゴヤドームと比べればなおさらで渡辺俊は曲がり方の大きいカーブを見せ球にし曲がり方が小さくて風の影響を受けにくいシンカーを勝負球に使った。

 初回。絶対に塁に出してはいけない荒木に対してシンカーをファウルさせて追い込み、ボールになるカーブで二飛に打ち取った。風の影響を受けた100キロのカーブは荒木にとって、待てども待てどもボールが来ない感じだったはずだ。これでカーブが「予想以上に来ない」という意識付けができた。遅すぎる球がインプットされた中日打線は120キロ前後のシンカーに食い込まれる。続く井端、森野をシンカーで打ち取ったのはその典型だ。同点の4回無死一塁、打席に和田という場面でも119キロシンカーで注文通りの併殺に仕留めた。最後まで風を生かし切り、自分のペースを崩さずに1失点で投げ切った。

 ◆風の影響に対応できなかった中日・山井 切れのある直球と鋭く曲がり落ちるスライダーが持ち味の山井。立ち上がりから、右打者に対しては内角に食い込ませるシュートで追い込み、ボールになるスライダーを振らせにきた。ところが、肝心のスライダーは曲がり方が大きいから風の影響をモロに受ける。ストライクからボールになるところが、普段よりも打者の手前で曲がり過ぎてしまい、ボールからボールになっていた。ロッテ打線はシーズン中から低めの変化球の見極めが徹底されており、これまでは振ってくれていたスライダーを振ってくれなかった。
 スライダーは見逃されてボールになる。3回は2死二塁からサブローに低めのスライダーを見逃され、苦し紛れの内角シュートを同点打。これでストレート系は狙われていると感じ、より厳しくいかないといけなくなった。そして4回。スライダーは見逃され、厳しくいった直球は外れ、ストライクを取りにいく直球を狙い打たれた。2死満塁から、清田には直球が2球外れた2ボールから甘い高めの142キロ直球を中越え三塁打。続く井口にも初球、ど真ん中の140キロ直球を右中間二塁打された。生命線であるスライダーの持ち味を風に殺され、自分の投球を見失ったことが、4回途中で5失点KOされた最大の原因だった。

 ◆守りも風に翻ろうされた中日 山井がKOされた4回。先頭・福浦の右中間へのライナーを右翼・野本が追ったが、打球の落下点とはかなり離れた位置に向かって走っていた。おそらく野本はもっと風で押し戻されると思ったのだろう。それが予想外に打球が伸びてきた。実は千葉マリンの外野は、風向きがバックスクリーンから本塁方向であっても、ライナー性の低い打球はバックネットからはね返ってくる風が追い風となって伸びてくるのだ。仮に一直線に追っていても抜けていた打球だからミスではない。しかし、打球の追い方がおかしかったことで「風に慣れてない」という嫌な雰囲気になったのは確かだ。
 対照的だったのは3回のロッテの守備だ。1死二、三塁から荒木のライナーに左翼手・清田は反応よく突っ込み、犠飛にはなったが、ギリギリで捕球した。普通ならワンバウンドで確実に捕球にいくところ。それを清田は外野のライナーは伸びてくるという風の特性を知っているから、突っ込んで捕球できたのだ。

 ◆栗山 英樹(くりやま・ひでき)氏 1961年(昭36)4月26日、東京都生まれの49歳。83年ドラフト外でヤクルト入団。俊足巧打の外野手として活躍。89年ゴールデングラブ賞。白鴎大教授

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2010年11月3日のニュース