ディーン 大会新で初の五輪切符獲得!村上の13連覇阻止

[ 2012年6月10日 06:00 ]

<男子やり投げ決勝>優勝を飾って五輪出場を決めたディーン元気はガッツポーズ

陸上日本選手権第2日

(6月9日 長居陸上競技場)
 陸上の日本選手権第2日はロンドン五輪代表選考会を兼ねて行われ、男子やり投げでは、英国人の父を持つディーン元気(20=早大)が84メートル03の大会新記録をマークして初優勝。この種目の第一人者で09年世界選手権の銅メダリスト、村上幸史(32=スズキ浜松AC)の13連覇を阻止し、代表に決まった。成長著しい20歳は、7月開幕の本大会でのメダル獲得の期待が集まっている。

 勝利の女神は84メートル地点に潜んでいた。世界レベルのビッグスロー合戦。

ディーンの4投目は村上が3投目にマークした83メートル95を越え、84メートルラインからわずか3センチ達したところに突き刺さった。自己ベストの84メートル28に肉薄する84メートル03を確認すると、両手を突き上げて派手なガッツポーズ。わずか8センチ差を制し「僕の時代が来た。最高にうれしい」と笑った20歳は、観客席で声援を送ってくれた英国人の父・ジョンさん(57)に向け、「サンキュー、ダディ!」と手を振った。

 序盤は12連覇中の村上に引き離された。2投目に82メートル93、3投目に83メートル95と大会記録を更新した村上に対し、ディーンは3投を終えて81メートル62止まり。助走路の距離感がいつもと違ったことが原因だった。「変な感じ。(スターティングラインから)芝生までの距離が、長居(陸上競技場)だけに長い」。それでも「自分のリズムを大事にした」と言う4投目に爆発。村上を8センチ差で逆転し、「連覇を止められて何よりうれしい。ハッハッハッ」と豪快に笑った。

 4月の織田記念で、日本歴代2位の84メートル28をマーク。一気に表舞台に躍り出た要因は、「やり投げ愛」だ。今年2月、投てき強豪国・フィンランドのナショナルチームに単身で合流し、同国とスペインで約3週間の合宿を行った。もともと英語は堪能で同部屋になった87メートル33の自己ベストを持つルスカネンから技術だけでなく、競技に対する姿勢などメンタル面でのアドバイスを受けた。「欧州の人は“やり投げを愛している”って言っていた。ボクはそれまでやり投げのことを漠然としか考えていなかった」。常に競技のことを考え、トレーニングに打ち込んできた成果が、村上との一騎打ちでの勝利を呼んだ。

 早大陸上部の練習場の壁には、今季に懸ける決意が記された貼り紙がある。「LONDON Go Back Home」――。村上の連覇を止め、父・ジョンさんの母国で行われる夢舞台の切符をゲット。それは父の実家ニューカッスルで暮らす祖母に再会するという夢を果たすことになる。「ゴールはここじゃない。まだ20歳だし、世界一だって遠くない」。ディーンの視界には、夢の表彰台がくっきりと見えている。

 ◆ディーン 元気(でぃーん・げんき)1991年(平3)12月30日、神戸市出身の20歳。兄・大地さん(24)の影響で平野中1年から陸上を始め、3年時に円盤投げでジュニア五輪優勝。市尼崎高では3年時の高校総体で円盤投げとやり投げの2冠。早大に進学した10年からやり投げに専念した。人間科学部3年。1メートル82、88キロ。

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