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世界105位奮闘!鄭大世、意地のアシスト

[ 2010年6月17日 06:00 ]

<ブラジル・北挑戦>ルッシオから厳しいマークを受ける北朝鮮の鄭大世

 【W杯1次リーグG組 北朝鮮1―2ブラジル】FIFAランク105位と出場国最下位の北朝鮮が、2大会ぶりの優勝を狙う同1位のブラジルを苦しめた。8強入りした66年イングランド大会以来44年ぶりの出場だったが、超守備的布陣で後半10分まで得点を許さず1―2の惜敗。川崎F所属のFW鄭大世=チョン・テセ=(26)はただ1人前線で奮闘し、0―2で迎えた同44分にDFチ・ヨンナム(33)のゴールをアシストする活躍を見せた。

【試合結果


 試合後のあいさつを終えると、精根尽き果てたようにピッチへ倒れ込んだ。後半44分、後方からのロングボールを頭で落とし、DFチ・ヨンナムのゴールをアシストしたのは鄭大世。前半28分に接触プレーで左ひざに裂傷を負い、両足がつるほど走り回ったが「勝てなかったことが悔しい。ゴールを決めて勝利に導くことができなかった」と本気で悔しがった。
 気合の丸刈り頭で登場し、試合前に国歌が流れると感極まって泣いた。「やっとこの舞台に立てたと思うと感動した。サッカーを始めてから、ずっとこの日を想像してやってきた。こんな大きな舞台で世界一のブラジルと戦えるなんて…」
 韓国籍の父と朝鮮籍の母を持つ在日3世。韓国籍を持っているが「母の母国を選ぶのが普通」という習慣にならい、朝鮮学校で学んだ。川崎Fで頭角を現すと在日朝鮮協会が動き、07年5月に北朝鮮代表に初招集。韓国籍の在日選手が北朝鮮代表に選ばれるのは初めてで、韓国メディアからは今も「なぜ北朝鮮代表なのか?」と質問されるが「オレの国は朝鮮と答えるようにしている」。国への思いは人一倍強い。
 チームはブラジル相手に5―1―3―1の超守備的な布陣を敷いた。1人だけ速攻狙いで前線に残った鄭大世は、前半11分に3人を引き連れて右足シュートを放つなどDFルッシオと激しい肉弾戦を繰り広げた。「スピードは通用した」と大きな手応えをつかんだ。
 激しい守りは敵将ドゥンガ監督を「完ぺきだった」とうならせ、キム・ジョンフン監督は「後の2試合に向けて自信を持てた」と話した。次戦は66年大会準々決勝で敗れたポルトガルが相手。「1勝すれば上に行けると思う。信じて戦いたい」と鄭大世。北朝鮮が“死の組”をかき回す。

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2010年6月17日のニュース