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反町康治氏 日本も見習いたい北朝鮮の“ハエサッカー”

[ 2010年6月17日 13:36 ]

<ブラジル・北朝鮮>競り合うブラジル代表DFマイコン(左)と北朝鮮代表FW鄭大世

 【反町康治氏のスペシャル興奮観戦記 ブラジル2―1北朝鮮】ブラジルがなぜ強いかの答えが見えた試合だった。先制点は右サイドでマイコンがオーバーラップし、エラーノからのパスを受けて角度のないところからシュートした。明らかに狙っており、ゴール前の選手に合わせると思わせてちょっとしたすきを見つけ、迷うことなくシュートしたのはブラジル特有のしたたかさだった。中央から行けないときにはサイドで数的優位をつくって突破すればいいが、分かっていてもなかなかできないもの。それをイメージ通りにやるところが凄い。

 2点目はロビーニョのスルーパスにエラーノが反応して決めたが、これも狭いスペースでも一瞬のすきを見つけてそこに入っていくエラーノと、そこにパスを出せるロビーニョとの絶妙なコンビネーションで、これも彼らのしたたかさだった。

 ブラジルは北朝鮮にゴール前で5人のブロックをつくられ、徹底して守られた。前半は0―0。1次リーグ突破のためにも絶対に勝ち点3を取らなければいけない試合だったが、攻め急いで先制されたり、リズムを壊さないよう、慎重に戦っていた。

 ブラジルの基本的なコンセプトは、ダブルボランチは上がらず攻守のバランスを取ることに専念し、そのぶん両サイドバックが積極的に攻撃参加してシュートも狙う。サイドバックの得点が多いのはブラジルの伝統であり特徴だ。この試合でも両サイドバックで合計7~8本のシュートを打っていたと思う。もう1つは「2人の関係」の精度の高さ。今のサッカーはパスを10本もつないでゴールに結びつけることは難しい。2点目のように鋭く正確なパスで手数をかけずに攻めないと得点は奪えない。さらに守備の意識も高く、華麗な攻撃的サッカーのイメージがあるが、実は堅実な守備がブラジルを支えている。ボールホルダー(ボールを持っている選手)の後ろに必ず5人の選手がいて、常に守る態勢を取っている。今春の欧州チャンピオンズリーグで優勝したインテル・ミラノのモウリーニョ監督と同じやり方。これが世界のトレンドと言ってもいいのかもしれない。

 北朝鮮は、私がU―23日本代表監督をしていた06年アジア大会と07年の4カ国トーナメントで2度対戦したメンバーが軸で、スタメンに5~6人いた。伝統的に5バックで、しっかり守って少ないチャンスを生かして点取る戦い方も変わっていなかった。中盤を省略して2トップに直接パスを入れてくるが、このやり方に自信を持っているから迷いがない。1点を返して最後まであきらめないメンタリティーも見せた。岡田監督が「ハエがたかるようにボールを取りにいく」と言っていたが、北朝鮮の守り方はまさにそれ。1人がチャレンジ、2人がカバーと、しつこくまとわりついていく守備は日本代表も学ぶべきものがあった。(湘南ベルマーレ監督)

 ◆反町 康治(そりまち・やすはる)1964年(昭39)3月8日、埼玉県生まれの46歳。静岡・清水東高―慶大を経て87年に全日空(旧横浜F)入り。94年に平塚(現湘南)に移籍し、97年に現役引退。日本代表で国際Aマッチ4試合出場。01~05年に新潟監督、08年北京五輪日本代表監督、09年から湘南監督。1メートル73、64キロ。

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2010年6月17日のニュース