男子走り高跳び優勝分かち合う珍事

[ 2021年8月9日 05:30 ]

1日、男子走り高跳びで金メダルを獲得したタンベリ(左)とバルシム(撮影・小海途 良幹)
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 【クイズ王・伊沢拓司の五輪の書(17)】 史上初めて無観客で開催された今大会。歓声のほとんどない静かな競技会場で選手たちはお互いを称え合い、喜びを分かち合うシーンがよく見られました。特に印象的だったのは、スケートボード女子パークの決勝。難易度の高い演技に果敢に挑み、最後は転倒してしまった岡本碧優選手を、米国とオーストラリアの選手が担いで称えたシーンは海外メディアでも報じられました。

 優勝を分かち合う珍事も起きました。男子走り高跳び決勝。1位で並んでいたカタールのムタズエサ・バルシム選手とイタリアのジャンマルコ・タンベリ選手は「ジャンプオフ」と呼ばれる決定戦をせず、2人とも金メダリストとなりました。

 「そんなのあり?」という声もありましたが、ちゃんと競技ルールで定められているんです。走り高跳びと棒高跳びは記録が並んだ場合、ジャンプオフで1回ずつ跳び優劣を競います。これを実施するかどうかは選手が決めることができ、やらない場合は「同成績により第1位となる」という規定があるんです。大きなケガを乗り越えてきた両選手。お互いの苦労を知るだけに、審判にジャンプオフに進む旨を伝えられたバルシム選手は「金メダルは2つもらえるか?」と尋ね、それが認められました。

 かつては日本の選手もメダルを共有したことがあります。1936年ベルリン大会の男子棒高跳びで、大江季雄選手と西田修平選手が2位で並び「日本人同士で争うことはない」と決定戦を辞退。帰国後に銀と銅のメダルを半分に割ってつなぎ合わせ「友情のメダル」を作ったのです。

 1年延期、無観客と異例ずくめの今大会。それでも変わらなかったスポーツマンシップが、これからも守られていくことを願うばかりです。=終わり=

 ◇伊沢 拓司(いざわ・たくし)1994年(平6)5月16日生まれ、埼玉県出身の27歳。東大経済学部卒。開成高時代に全国高校クイズ選手権で史上初の個人2連覇。TBS「東大王」で人気に。19年、株式会社QuizKnockを設立しCEOに就任。

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