【1985年センバツ KK世代】PL桑田&清原を破った“無名”伊野商・渡辺智男 佐々木主浩、小林昭則

[ 2024年3月14日 07:20 ]

日本中が沸いたKKコンビ。PL学園の桑田真澄(右)と清原和博
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 第96回選抜高等学校野球大会(センバツ)は3月18日に開幕する。今大会は一般選考29校、21世紀枠2校、神宮大会枠1校の計32校が選考され、13日間の熱闘を繰り広げる。早春のセンバツは世代を代表するスター選手たちが最上級生で迎える大舞台でもある。「〇〇世代」として春の甲子園を沸かせた選手たちの特集。第5回は1985年の「KK世代」。(構成 浅古正則)※敬称略

 ■清原和博、桑田真澄(PL学園=大阪)

 KKコンビが最終学年となって迎えた甲子園。浜松商(静岡)との1回戦、猛打が爆発した。5回、清原が甲子園通算8号ソロを放つと打線は一気に勢いづき13安打11得点の大勝。清原は3打数2安打2四球、桑田は5打数4安打。沸いたのは8回。9点リードながら1死満塁のピンチで場内アナウンスが「ピッチャー清原クン」と告げた時だ。前年秋の新チーム誕生から公式戦を含め2度登板しているが、甲子園では初登板。稀代のスラッガーがマウンドで浜松商を威圧した。5人の打者に18球、無安打2奪三振で試合を締めた。桑田は甲子園通算13勝目。最高の形で悲願の春制覇に踏み出した。

 2回戦は桑田が粘りの投球で7安打2失点で甲子園14勝目。相手は4カ月後夏の決勝で激突する宇部商(山口)だった。準々決勝では桑田が天理(奈良)に完封勝ち。運命の準決勝を迎える。

 相手の伊野商(高知)は春夏通じ甲子園初出場。エースの渡辺智男は大会有力投手にも数えられない無名の投手だった。2回、清原の第1打席。フルカウントからの6球目。渡辺の真ん中から内角寄りの高めの直球に、清原のバットはかすりもしない。4回無死一塁の第2打席。清原は真ん中高めの直球にまたも空振り三振。6回はストレートの四球。クライマックスは8回、2死一塁。1発出れば同点だ。初球、カーブを空振り。2球目は外角高めの141キロ直球を空振り。3球目、渡辺の直球は糸を引くように外角に構えた捕手のミットに吸い込まれた。見逃し三振。清原は悔しそうにバットをグラウンドに振り下ろした。試合後、大阪・羽曳野に向かうバスの中、中村順司監督は「上には上がいるのを思い知ったか。もう一度ビデオを見直そう」と言った。寮に到着した清原は室内練習場で悔しさを振り払うようにバットを振った。大舞台で再び頂点に立つためのスタートだった。桑田は渡辺との投げ合いに屈し、紫紺の大旗をつかむことはできなかった。夏も出場。2年ぶりの日本一に輝いた。清原は甲子園通算13本塁打、桑田は同20勝。清原は同年秋ドラフト1位で西武。桑田は巨人1位。

 ■渡辺智男(伊野商)

 準決勝で大本命PL学園を倒した伊野商は翌日の決勝で帝京(東京)と対戦した。準々決勝から3連投の渡辺は球が走らず初回からピンチの連続も懸命にしのぐ。1点を勝ち越した6回、自らのバットで右翼へ2ラン。8回にもダメ押しの適時打を放ち3打点。終わってみれば6安打13奪三振の完封勝利。無名剛腕が同世代の怪物たちをなぎ倒し初出場初優勝の偉業を成し遂げた。夏は高知大会決勝で中山裕章(85年横浜大洋=現DeNA=1位)擁する高知商に敗退。NTT四国入り。ソウル五輪銀。88年1位で西武。プロで清原とチームメートとなる。

 ■小林昭則・河田雄祐(帝京)

 PL学園とともに優勝候補としてあげられていた帝京は古豪・広島商相手にエースの小林昭則が3安打完封の快投。初戦を突破した。2回戦も小林昭が東海大五(現東海大福岡)を4安打完封。準々決勝は報徳学園(兵庫)相手に2失点ながら3安打に抑える好投でベスト4に導いた。準決勝も池田(徳島)を4安打完封。5年ぶりの決勝に進出も伊野商・渡辺との投げ合いに敗れ悲願の全国制覇はならなかった。帝京打線のリードオフマンは俊足巧打の河田。19打数4安打に終わった。2年生で奈良原浩(90年西武2位)がベンチ入りしている。河田は同年秋広島3位。小林は筑波大を経て89年ロッテ2位。

 ■佐々木主浩(東北)

 秋季東北大会準優勝で2季連続甲子園に乗り込んできた東北(宮城)。エースは大型右腕・佐々木。1回戦堅田(滋賀)相手に102球の完封勝利でスタートした。2回戦は明野(三重)。佐々木は4回1点を失うが、5回自らの二塁打で同点。9回押し出しのサヨナラ勝利で8強に進出した。準々決勝は2年前の覇者・池田。佐々木は粘りの投球で6回まで無失点も7回1死二、三塁からスクイズを決められてしまう。これが決勝点となり悔しい敗戦となった。控え投手の葛西稔は登板機会はなかったが池田戦で代打出場。1打数無安打だった。夏も出場。同じく8強に進出も甲西(滋賀)にサヨナラ負けした。佐々木は東北福祉大を経て89年横浜大洋1位。葛西は法大を経て89年阪神1位。

 ■秋元宏作(国学院久我山)

 プロ入り後、横浜で大魔神・佐々木とバッテリーを組んだ秋元も国学院久我山(東京)の4番・捕手として大舞台に立った。松商学園(長野)相手に6回三塁打を放ち気を吐いたが競り負け。悲願の甲子園1勝はならなかった。夏は西東京大会準決勝敗退。日大(中退)を経て86年西武ドラフト外。


 【85年選抜に届かなかった“KK世代”主な選手(秋季大会成績)】田中幸雄(都城=宮崎大会敗退)遠山奨志(八代第一=熊本大会準々決勝敗退)佐々岡真司(浜田商=島根県大会準決勝敗退)西山秀二(上宮=大阪府大会3位決定戦敗退)、野田浩司(多良木=熊本大会敗退)、大島公一(法政二=関東大会1回戦敗退)

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