【1983年センバツ 水野世代】防御率0・00&打率・455“阿波の金太郎”、掛布2世・藤王、W仲田

[ 2024年3月14日 07:15 ]

第55回センバツ大会2回戦で岐阜一を相手に完投勝利を飾った水野のピッチング
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 第96回選抜高等学校野球大会(センバツ)は3月18日に開幕する。今大会は一般選考29校、21世紀枠2校、神宮大会枠1校の計32校が選考され、13日間の熱闘を繰り広げる。早春のセンバツは世代を代表するスター選手たちが最上級生で迎える大舞台でもある。「〇〇世代」として春の甲子園を沸かせた選手たちの特集。第4回は1983年の「水野世代」。(構成 浅古正則)※敬称略

 ■水野雄仁(池田)

 史上4校目の夏春連覇に挑んだのが池田(徳島)。主役は水野だった。前年夏、悲願の日本一を達成。新チームには水野と3番・江上光治らが残った。前年秋、四国大会V。「夏春連覇」への挑戦権を手に甲子園に乗り込んできた。

 1回戦は帝京(東京)。初回水野が先制タイムリー。なおも1死一、二塁から5番・吉田衡が左中間スタンドへ3ラン。“山びこ打線”は止まらない。14安打11得点の圧勝。水野が8奪三振で完封した。愛嬌のある笑顔に野球の実力はドラフト1位クラス。「阿波の金太郎」はファンを魅了した。2回戦、岐阜第一にも12安打10得点。準々決勝の大社(島根)戦も毎回の17安打8得点。打線の援護を受け水野は7回2死までパーフェクト。「3、4回ごろからベンチに帰ってくるとみんなが冷やかすので早くから意識してました」。大記録はならなかったが2安打完封勝利を飾った。

 準決勝、明徳(現明徳義塾)戦は苦しんだが8回2点を奪い逆転。9回水野が締めて最大の危機を乗り切った。横浜商(神奈川)との決勝は水野が完封。。74年「さわやかイレブン」で甲子園を沸かせた山の子たちが9年をかけて紫紺の大旗に手が届いた。水野は5試合を投げて防御率0・00。22打数10安打10打点、打率・455と投打で大車輪の奮闘。“高校野球の顔”となった。史上初の夏春夏の3連覇を狙った夏は準決勝で桑田・清原のPL学園(大阪)に完敗。夢を断たれた。同年秋、巨人1位。

 ■藤王康晴(享栄)

 大会の前半で一躍ヒーローとなったのが愛知・享栄のスラッガー藤王だ。あの400勝左腕・金田正一を輩出。古豪の主砲がプロのスカウトたちの度肝を抜いた。1回戦の初回1死一、二塁。高砂南(兵庫)西尾のカーブをすくい上げるように右翼ラッキーゾーンに運んだ。3回には外角低め直球を三遊間へ。芝生の上を滑るように左中間に抜けていく適時二塁打。第3打席も中越え二塁打。第4打席は左前打。最終第5打席は四球も初舞台で5打席4打数4安打5打点でチームを1963年春以来20年ぶり、享栄商から享栄高に校名変更後初の甲子園勝利に導いた。関西地区のメディアを中心に“掛布2世”との見出しが躍ったが、1メートル83、78キロは“1世”よりも一回り大きいしなやかな体格。計り知れない将来性を感じさせた。

 4日後の泉州戦(大阪)。第1打席は四球も第2打席は右翼へ2試合連続となる2号ソロ。第3打席は中前打。第4打席では再び八木から右手一本で右翼ポール際まで運ぶ大会3号。1回戦と合わせ7打数7安打7打点。大会3本塁打と1試合2本塁打は現在もセンバツ個人最多本塁打タイ記録。2試合連続本塁打も当時の最多タイ記録。高砂南戦からの9打席連続出塁は史上2人目の最多タイ記録であった。準々決勝の東海大第一(現東海大静岡翔洋)戦の第1打席、2球目の外角球を流した。遊撃手が横っ飛びで捕球、一塁へ送球したがセーフ。スコアボードに「H」のランプが灯った。第2打席は四球。第3打席は二ゴロで記録は途切れたが、11打席連続出塁は現在もセンバツ大会単独トップの大記録だ。第4打席も中前打と気を吐いたが試合は延長10回無念のサヨナラ負けとなり藤王の春は終わった。通算10打数9安打。この試合第1打席までの8打数連続安打は現在も最多タイ。個人通算塁打「20」は当時の大会タイ。記録ラッシュの怪物スラッガーは“阿波の金太郎”以上の衝撃を残して甲子園を去って行った。夏は愛知大会決勝で中京(現中京大中京)に敗退。願いはかなわなかった。同年秋、中日1位。

 ■三浦将明(横浜商)

 決勝では豪打・池田の前に屈したが、古豪Y校のエース三浦もプロスカウトの注目を浴びていた。初戦、2失点ながら前年夏の準優勝校・広島商を撃破すると2回戦では星稜(石川)を3安打完封。準々決勝では駒大岩見沢(14年閉校)を2試合連続の3安打完封で退けた。準決勝は東海大一を6安打完封。2回戦の7回から30イニング「0」を連ねて王者・池田に挑んだ。12安打を浴びながら3失点でしのいだが敗戦。大旗にあと一歩届かなかった。夏も決勝に進出したがPL学園に敗退。日本一をつかめなかった。同年秋、中日3位。

 ■仲田幸司・仲田秀司(興南)

 プロ注目のバッテリーとして話題になったのが仲田幸と仲田秀。前年秋の九州大会を制し、沖縄初のVを期待されていた。1回戦は上宮(大阪)。興南は4番・仲田秀の中前打などで好機を築き1点を先行。8回まで仲田幸が「0」を連ねた。だが土壇場の9回裏、痛恨の同点打を浴び延長へ。10回1死一、三塁から4番・捕手の光山英和(同年秋近鉄4位)の遊ゴロ併殺崩れの間に1点を失いサヨナラ負けした。同年秋、仲田幸は阪神3位、仲田秀は西武5位。

 ■香田勲(佐世保工)

 星林(和歌山)との1回戦、香田は速球と緩いカーブのコンビネーションで5安打完封勝利。2回戦でも報徳学園相手に2安打完封。「コースに決まっていたので打たれる気がしなかった」準々決勝は明徳に8点を奪われ敗退した。夏は2回戦で横浜商に敗れた。同年秋、巨人2位。


 【83年センバツに届かなかった“水野世代”主な選手(秋季大会成績)】吉井理人(箕島=和歌山県大会準々決勝敗退)、武田一浩(明大中野=東京都ブロック予選決勝敗退)、渡辺久信(前橋工=群馬県大会準決勝敗退)、古田敦也(川西明峰=兵庫県大会敗退)、山本昌(日大藤沢=神奈川県大会準々決勝敗退)、星野伸之(旭川工=北海道旭川支部予選決勝敗退)

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