【内田雅也の追球】岡田監督が「連覇」を広言する理由 自信に裏打ちされた信念があればこそ

[ 2024年2月10日 08:00 ]

今年はあえて「連覇」を口にしている阪神・岡田監督
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 阪神監督・岡田彰布が昨年、日本一となった数日後に漏らした言葉を覚えている。

 「来年は連覇がかかる……か」と思いを巡らせるようにつぶやいた。「昔、連覇なんて言ってたか?1985年の次の86年、2003年の次の04年、05年の次の06年に連覇、連覇なんて口に出して言うてたか?どうや……」。自問自答するようにして言った。「いや、言うてない。言うてなかったよ。連覇なんてことを口に出して言うてなかったわ」

 86年は選手、04、06年は監督として連覇に挑み、果たせなかった。

 だからだろうか。岡田はやたらと「連覇」を口にするようになった。オーナー報告会、ハワイでの優勝旅行、キャンプイン前のミーティング……と公の席ではっきりと目標を「連覇」と口にしている。2リーグ制で球団史上初となる連覇をみすえて、何度も何度も口にしている。あえて口にしているのだとみている。

 監督に復帰した一昨年秋、選手たちに無用の重圧をかけてはいけないと「優勝」を禁句とし「アレ」と言い換えた慎重さ、慎み深さとは正反対、好対照を描いている。

 キャンプイン前日のミーティングで岡田は「今年は普通にやれば勝てるんよ。だから勝ちたい。余計に勝ちたい」と選手たちに語りかけた。貪欲と言うか、欲望丸出しである。それは「普通にやれば勝てる」という自信に裏打ちされている。

 星野仙一は2003年に優勝に導いた際、「優勝」を「呪文」にしていた。<「優勝するぞ、優勝するぞ」という声がコーチや監督から、そして選手やマネージャー、トレーナーからも、用具係や広報担当からも飛び出すようになっていくとスポーツ紙の記事にもなる、テレビのアナウンサーもごくあたりまえのように、平気でいうようになる。それはチームのひとつの新しい活気になる>と著書『星野流』(世界文化社)にある。

 要は信念ではないか。英国の謎の哲学者、ジェームズ・アレンが1902年に書いた『「原因」と「結果」の法則』(サンマーク出版)にある。<人間を目標に向かわせるパワーは、「自分はそれを達成できる」という信念から生まれます。疑いや恐れは、その信念にとって最大の敵です>。

 一部に「連覇連覇と広言して大丈夫か」と慢心を案じる声がある。信念の「連覇」を信じたいと思う。 =敬称略=
 (編集委員)

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