【阪神・青柳インタビュー(2)】能見篤史氏も舌を巻いた探求心 昨年の「借り」を返す態勢は整った

[ 2024年2月10日 05:15 ]

能見篤史氏(右)と対談する阪神・青柳(撮影・須田 麻祐子)
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 (1)から続く

 能見 キャンプの感触はどう?

 青柳 例年よりめちゃくちゃ良く入れてます。いまのところは順調以上というか。いまから試合でもいけるぐらいの状態になってます。

 能見 オフの取り組みが生きてるのかな?

 青柳 昨年が本当に悪すぎました。オフから体が動かなかったのを、動かすトレーニングをずっとして。いざ、キャンプに入ったら、スゴく状態が良かった。もう年なのか、そういうトレーニングが必要かなと感じました。

 能見 年ではないと思うけど…動かないというのは昨年のシーズン中?

 青柳 昨年の前半は気付かなくて、なんで悪かったのか分からなかった。フォームの部分も言われましたけど、分かってるけど直せない。可動域が狭くて、自分が動かそうとしたところに体がもっていけない。ファームに落ちた時にようやく気付いて徐々に動かすトレーニングをしていきました。

 能見 でも気付けるっていいよね。実はそれが大事。コーチもいろんなヒントを与えるけど、本人がどう消化して気付いていくか。気付いたものはなかなか失わない。言われたことを“これいいな”と思ってやっていくとだんだんおかしくなったり…。自分で気づいて“やっぱりそうだな”となれば、それが基盤となる。

 青柳 能見さんは何年もやってきて体がしんどくなった時ってありますか?どうしてました?

 能見 受け入れてます。

 青柳 それに合わせてやっていくってことですか?

 能見 35歳を超えたあたりから、これができてたのにな…っていうのがどんどん増えてくる。それを補うためにいろんなことをやるけど、なかなかできない。じゃあ、受け入れながらできることをやっていく。

 青柳 それは何年もやったからか、年齢なのかどっちなんですか?

 能見 年齢だと思う。回復量も年々落ちていったり。できることを探しながら。キャリアの最後の方はもう苦しいことしかないから。

 青柳 思い通りにいかないのもそうです。

 能見 そうそう。状態は悪くてトレーナーさんに可動域を出してもらったり。でも、出してもらってもボールの質は変わらなかった。ダメだなこれ、って。

 青柳 本当に昨年が全く一緒で。自分で分かってるのに体が動かなかった。ナイスボールと言われて147キロとか出てるんですけど、なんか違うな…っていうのを1年間ずっとやっていました。オフは肩肘を休めるんですけど、可動域の部分で(上半身の)左(側)は曲がるけど、右は曲がらなかったり。投げにいく時に体が残らなくて(体が開いて)前を向いたり。そこと、股関節に着目して、ずっとトレーニングをしていたら、今年はいい感じで投げられている。そこだけでそんなに変わるんだと。

 能見 素晴らしい。そうやって気付く選手は、なかなかそこから落ちないからね。

 青柳 人一倍やらないといけないと感じました。

 能見 いま年齢は?

 青柳 次の誕生日(12月11日)で31歳になります。

 能見 まだまだいけるよ。でも、今の話を聞いて安心した。そうそう崩れることはないなと。投げ方が独特で、ほぼアンダースローに近い状態であれだけの出力が出る。ヤギしかできない。その体の構造で体の使い方を知っている人は実は少ない。良くしてあげたいけど、動きが分からないから。

 青柳 能見さんは投手(兼任)コーチをやってたじゃないですか。変則の人が困ってたらどうしてたんですか?

 能見 ヒントはたくさん与えるけど、分からないものは分からないから。どういう体の使い方をしてるか、何を一番意識して、どういう感覚でやってるのかを聞く。その中で自分の持ってるスキルと照らし合わせながら。だから、山本由伸投手は、あのレベルの景色は自分には分からなかった。勝ってほしい試合でずっと勝ち続けて全く負けない投手の景色は見たことないから、分からないのよ。

 青柳 でも、記事では由伸が能見さんに教えてもらってたってよく出るじゃないですか。

 能見 あんなんは言わなくていいのに、気を使ってね。でも、フォームの中で「今日はちょっとおかしいね」とかワンポイントを言うぐらい。人の体になったことないから。だから由伸と体替えてほしいもん。

 青柳 僕が能見さんの身体能力だったらもっと勝てそうですけどね。

 能見 ヤギは身体能力、高いよ。短距離は遅いけど、長距離速いし、馬力がある。

 青柳 ありがとうございます。

 能見 良くなった状態が何なのか分かっていることが大事。ここさえ押さえておけば、悪くなっても戻れるという。基礎レベルは元々あるので、直せる要素を自分の中で持っていれば大崩れはない。ヤギの話を聞いて、本当に安心した。

 ▽青柳の23年 3月31日のDeNA戦(京セラドーム)で初の開幕投手を務め、5回2/31失点で白星発進。以降の6試合は1勝3敗に沈み、5月には6年ぶりの2軍調整。7月に復帰して計18試合で8勝6敗、防御率4・57で終えた。21年の2冠(13勝と勝率・684)、22年の3冠(13勝、防御率2・05、勝率・765)からは成績を落とした。

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