アスレチックス入り藤浪の復調の陰にジョコビッチに通じる食事療法「まさか卵も牛乳もアレルギーとは…」

[ 2023年1月14日 15:24 ]

阪神・藤浪
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 阪神からポスティングシステムを使って米大リーグ・アスレチックスに移籍する藤浪晋太郎投手(28)は、昨季、1試合当たりの与四球が大きく改善するなど、近年の不振から脱却した。プロテニスの四大大会を21度制したノバク・ジョコビッチ(35=セルビア)に通じる「遅延型フードアレルギー」の食事療法に取り組んだことが、復調の一因になった。

 探究心旺盛な藤浪らしい取り組みだ。球団に栄養指導をする公認スポーツ栄養士の吉谷佳代さんの助言で、21年秋に血液検査をした。簡単な採血で、アレルギー反応を示す食べ物が分かる検査だ。結果は、卵と牛乳に異常を示す高い数値が出た。

 「まさか自分に卵のアレルギーがあるとは…。むしろ、(卵に豊富に含まれる)タンパク質を摂取するために、積極的に卵を取っていたくらいなので」

 食物アレルギーは二つに大別される。口に入れてすぐ、じんましんやおう吐などの反応が出る「即時型」と、食べ続けることで体に蓄積されて様々な慢性症状を引き起こす「遅延型」だ。藤浪の検査は「遅延型」を調べるもの。これまで平然と口にしてきた卵と牛乳が、体に害を及ぼす可能性があることが分かり、少なからずショックを受けた。

 日頃から気を付けていた栄養面の取り組みを一歩進める形で、反応が出た食物を避ける除去食を、神経質になりすぎない範囲で始めた。「卵焼きやオムレツといった、“モロに卵”というのを避けている。つなぎや、天ぷらの衣などは気にしていない」。卵の代わりに豆腐や納豆を食べた。プロテインは、牛乳ではなく、豆乳で割って飲むようになった。

 2軍調整中だった昨年7月には、体の変化を実感していた。

 「寝付きが良くなって睡眠の質が良くなった。よく眠れている。お腹を下しにくくなったというのもある」

 2年連続開幕投手を務めた昨シーズン、8月以降は先発の一員として試合組み立てた。1試合当たりの与四死球率は21年の8・19から3・24に減少。食事療法が体調良化をもたらし、練習の質を向上させ、ひいては制球難改善につながった可能性がある。

 ボールが荒れるイメージが和らいだことは、ポスティングシステムを使っての米大リーグ移籍に一役買った。ダイヤモンドバックス、レッドソックス、ジャイアンツなど、少なくとも4球団から熱視線を送られる中、アスレチックスとの契約を決めた。日本時間14日に正式発表され、念願のメジャー挑戦が実現した。

 専用の検査キットを日本で販売する「アンブロシア」の志賀恵子社長によると、「遅延型フードアレルギー」は、米国で40年ほど前から認知されているという。代表的な原因食材は乳製品、卵、小麦。発疹、かゆみなどのアレルギー症状のほか、偏頭痛、腹を下しやすい、疲労感などを引き起こす。該当食材を避けることで体質改善が見込まれるそうだ。

 スポーツ界では、男子テニスの4大大会を21度制したノバク・ジョコビッチが、小麦製品を口にしない「グルテンフリー」の食事療法をしたことで有名。アンブロシア社によれば、国内では、競技を問わず、21年東京五輪に向けて「遅延型」の検査をする選手が増加したそうだ。体質改善をして成績につなげようという狙いだ。

 藤浪は私生活から自己研鑽を惜しまず、今季、長く続いた低迷に一区切りを付けた。食事療法を、「好きのものを食べ、好きなものを飲んでいても長く活躍する選手がいるので一概に何が正解かは言えないが、アスリートの意識としてはいいと思う」と位置付け、今後も継続する方針だ。23年に待つのは、世界最高峰の舞台。この先も高い意識で、壁を乗り越えていく。(阪神担当・倉世古 洋平)

 ○…阪神・才木も藤浪とともに「遅延型フードアレルギー」の検査をした。卵、牛乳、大豆、ジャガイモなどに反応が出たため、除去食に取り組んだ結果、「睡眠の質が上がった」と体質改善を実感したという。右ひじ手術から復帰して4勝を挙げた昨季、体調維持に一役買ったもよう。効果が大きかったようで、「今は逆に(除去食をしていないと)気持ち悪い」と継続して食に注意を払う考えだ。

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