スタインブレナーの後継者!?、現場に口出しするオーナーで、王者アストロズはどこに行くのか?

[ 2022年11月16日 13:25 ]

スミス・ストリートを埋め尽くしたアストロズのファン(AP)
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 ワールドシリーズ制覇から6日後に、GMが1年契約を断り退任したアストロズ。選手、コーチ、スタッフなど球団内でも「いったい何があったんだ」と驚く内幕をスポーツ専門局「ESPN」のジェフ・パッサン記者が15日(日本時間16日)に詳しくレポートしている。

 20年1月、サイン盗みのスキャンダルを受け、アストロズのジム・クレインオーナーはジェフ・ルーノー前GMを解雇、ジェームス・クリックGMを採用し、同時にこういった不祥事を避けるために、現場に関与していくとも付け加えた。アストロズはスキャンダルでよろめいていたのに、クリックGMはチームを安定させ、就任1年目はALCS(ア・リーグ優勝決定シリーズ)進出、2年目はワールドシリーズに出場した。

 しかしクレインオーナーはクリックGMを評価しなかった。理由はビジネスのやり方で、効率が悪く、決断においても割り切りがないと感じていた。22年シーズンにあたって、オーナーはもっと野球経験者の考えを生かしたいと、殿堂入りの名選手ジェフ・バグウェルとレジー・ジャクソンを採用、週1回のミーティングに招いた。彼らは育成システムがなってないなど、遠慮なくフロントの仕事に異を唱える。トレードデッドラインでは、カブスのウィルソン・コントレラス捕手とホセ・ウルキーディ投手のトレードがまとまっていたのにオーナーが反対し、白紙に戻った。

 クリックGMの契約は今年の10月31日まで。クレインオーナーはプレーオフでアストロズが負ければ、その時点で解雇するつもりだったが、勝ち続け世界一になった。ワールドシリーズ後、一応次の契約の交渉をしたが、1年契約で昇給はほんの少し。世界一GMに対して侮辱的ともいえるオファーで当然サインしなかった。その後、クレインオーナは自ら、リリーバーのラファエル・モンテロと交渉、3年総額3450万ドルの残留オファー。業界内では「1シーズに良かっただけの32歳に高すぎる」と批判的に受け取られている。

 アストロズはルーノー、クリック両GMがアナリティック(データ分析)を生かし、6年間で4度ワールドシリーズに進出、2度世界一という強いチームを作った。しかしクレインオーナーは自分の考えを入れ、もっと口出しして行きたいと考えている。もちろんオーナーだからその権限はあるが、近年の球界では珍しい。エンゼルスのアーティ・モレノオーナーのような失敗例があるからだ。現場に口を出したオーナーとしては、30年以上にわたってヤンキースを支配した故ジョージ・スタインブレナーオーナーが有名。クレインはそのレベルではないが誰よりもそれに近づいているとパッサン記者は指摘している。

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2022年11月16日のニュース