東京ガスの28歳右腕・臼井浩が「安泰」を捨てて狙うプロ入り ヤクルト戦でアピールなるか

[ 2022年10月8日 08:00 ]

昨年の都市対抗で橋戸賞を獲得した臼井(撮影・柳内 遼平)
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 半袖は肌寒くなってきた9月下旬。各紙のアマ野球担当記者は10月20日のドラフト会議に向け、プロ球団の指名情報収集のために靴底をすり減らしていた。そんな時期に噂を耳にする。「東京ガスの臼井がプロ志望だそうだ」。アマ野球担当となって3年目、これまでのドラフト情報の中で一番の衝撃だった。

 臼井浩(いさむ)投手は昨年の都市対抗で東京ガスを初優勝に導き、MVPにあたる橋戸賞を獲得した社会人屈指の右腕だが年齢は28歳。一流企業の野球部で輝かしい実績をつくり、引退後は社業に専念しても、指導者になっても安泰な生活が待っているはず。そんな彼がなぜプロを志望するのか…。すぐに東京ガスのマネジャーにアポの電話をかけた。

 9月30日、大田区にある東京ガスの練習場を訪れた。約30分の取材時間。ユニホーム姿の臼井は「プロに行けるのであれば行きたい。後悔はしたくない」と思いを語った。大学時代の最速は145キロで制球力と多彩な変化球が売りだった右腕。東京ガス入社後、投球フォームの修正により21年都市対抗で154キロ、今夏の都市対抗でも150キロを計測する「パワー」も手に入れ「若い時より今の自分に自信がある」と言った。遅咲きで全盛期を迎えたからこそ、28歳で表明した「プロ志望」だった。

 臼井の思いに強く共感した。福津市(福岡)の行政職員だった記者は29歳の時に新聞記者に転職。区切りとなる30歳を前にすると人生の終着点を逆算できる。人生で本当にしたいことを考え、転職活動に励んだ。臼井に29歳で転職したことを明かすと「きっかけは何だったんですか?」と逆に質問された。語り合ううちに共通するものは「なりたい!」という夢への思いと分かった。

 東京ガスは8日にCSファイナルS(12日から)を控えるヤクルトの1軍と練習試合を行う。登板予定の臼井にとっては、その実力をアピールする絶好の機会。残念ながら別の取材があって現地には行けないが、心の中で「悔いのないように力を出し切ってくれ!」と願っている。(記者コラム・柳内 遼平)

 ◇臼井 浩(うすい・いさむ)1994年(平6)4月2日生まれ、神奈川県出身の28歳。小1で野球を始め、大谷中では神奈川綾瀬シニアに所属。光明学園相模原(神奈川)では甲子園出場なし。中央学院大を経て、東京ガスでは18年に侍ジャパン社会人代表に選出。憧れの選手は東京ガスOBのロッテ・美馬。1メートル68、78キロ。右投げ左打ち。

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