大阪・渋谷 脳性まひ、電動車いすの中川 初のベンチ入り「目標はみんなに最大限協力すること」

[ 2020年7月25日 17:34 ]

令和2年大阪府高校野球大会2回戦   成城―渋谷(3回表途中降雨ノーゲーム) ( 2020年7月25日    豊中ローズ )

<成城・渋谷>最後の大会でベンチ入りする渋谷・中川慶人(撮影・平嶋 理子)
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 りりしいユニホーム姿だった。1990年夏に甲子園出場経験のある渋谷の中川慶人(3年)が背番号15を身にまとい、初のベンチ入りを果たした。

 「みんなが一生懸命プレーしているのを間近で見られるのはうれしいです」

 生まれつき脳性まひで、左手と両足が動かしづらく電動車いすが欠かせない。ただ、金属バットを振ることはできないが、ボール拾いやタイム計測でチームに貢献してきた努力を、ナインは知っている。今月8日のメンバー発表で「15」をもらい、この日朝、自宅で着替えてきたという「SHIBUKO」の赤い文字を胸に、ベンチで声を張り上げた。ファウルボールが飛んできたときなど、とっさに避けることができないため、ベンチメンバーが中川の前方に立ってサポートしてくれた。

 家族の影響で、大の阪神ファン。「体が大きくてかっこいい」と“超人”糸井を好きな選手に挙げる。見晴らしのいい車いす席を備える甲子園には、幼少期から通算10回ほど行ったことがあり、ライトスタンドから応援歌を歌ったり、ジェット風船を飛ばしたりして声をからすのが楽しい。皆と同じようにプレーはできないが、競技を愛する気持ちは同じかそれ以上。「全力プレーが見られるのが野球の好きなところ。三振を取ったり、ホームランを打ったりする瞬間が盛り上がっていいなと思います」。いつか野球部に入りたいと思っていたが、通っていた中学校には野球部がなく、高校で念願をかなえた。

 「自分にはこの3年間しかないけど、自分が仕事をしたときに、みんなに『ありがとう』と言ってもらえるのがうれしい。全部勝って大阪で優勝するのが目標。個人の目標は、全力でプレーするみんなに最大限協力することです」

 将来の夢は心理カウンセラー。卒業後は障がい者スポーツのボッチャに取り組み、大学で心理学を専攻することを希望している。「自分は足を動かせないけど、しゃべることはできる」。野球というスポーツにおいて、ベンチの声は大事な戦力。誰よりもチームに貢献して、最高の夏にする。

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2020年7月25日のニュース