ラグビーW杯で熱狂再び 神戸・山中「ラストと思う気持ちで」 李承信「どれだけいい準備ができるか」

[ 2023年1月1日 06:00 ]

決意を語ったる山中(左)と李(撮影・成瀬 徹)
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 熱狂再び――。ラグビー日本代表FB山中亮平(34)と同SO李承信(21)が9月8日に開幕するW杯フランス大会へ向け、本紙の単独インタビューに応じた。山中が出場した19年のW杯日本大会で日本代表は史上初の8強入り。日本中が熱狂の渦に包まれた。昨秋のニュージーランド戦や欧州遠征を経て、成長を感じ取ったという神戸の2人。8カ月後に迫る大舞台への思いを明かした山中は最後のW杯と位置付け、李は代表定着を誓った。(取材・構成 西海 康平、八木 勇磨)

 ――昨夏、昨秋と代表活動が続いた。
 山中 10月からは6試合あって、それも強いチームとばかりだった。課題が出て、それを修正して、次に向かって…。チームとしてすごく成長できた。

 李 今まで味わったことがないアウェーで、強度とプレッシャーがすごい試合を経験できた。チームとしてチャレンジができたし、個人としてもティア1(※1)に対してチャレンジできた。本当にいい経験を積むことができた。

 ――印象に残っているのは?
 山中 オールブラックス戦(※2)は良かったですね。しっかり準備をして、勝てる自信もあった。結果的に負けてしまったけど、自分たちのやってきたことが通用して、勝てるところは絶対にあると感じられて自信がついた。

 李 僕もオールブラックス戦が印象的で。チームとしてやってきたことが“間違ってなかった”と自信になった。憧れのチームに対してチャレンジできて、個人としても手応えを感じられた。

 山中 オールブラックスが相手でも、あんまり怖さはなかった。“あ、いけるやん”みたいな。最初にリードを広げられて“やっぱり強いかな”となったけど、プレーも通用して“いけるいける!アタックしていったらいける!”っていう気持ちになった。個人的には、イングランドの方が強い(※3)と感じた。

 ――強豪との差をW杯までに埋められる?
 山中 全然、埋められると思う。戦い方を“こうした方が良かったんじゃないか”というのはみんなが思っているし、コーチも分かっている。僕はいけると思っている。

 ――19年のW杯日本大会から4年。当時を思い返すことは?

 山中 あんまり思い出さないかな。映像を見て“ああ、懐かしいな…”ぐらい。けっこう忘れがちなので(笑い)

 李 僕は大学1年で、大学の寮で見ていて泣きそうになった。感動しました、本当に。心の底から“ああ、自分もこうなりたい”と。

 ――山中選手は19年のW杯以降も代表に選ばれ続けている。立ち位置は変わった?
 山中 なんかもう、なめられている(笑い)。マジでなめられていて“同期なんか?”っていうぐらい、みんな普通に話してくる。(中村)亮土とか姫野は敬語を使わない(笑い)。秋の合宿や遠征は堀江さんがいなかったから僕とリーチが最年長だったけど、リーチと僕とでは接し方が全然違う。何やこれ!と思って(笑い)

 ――李選手は山中選手から学んでいると聞いた。
 李 自分が10番、ヤマさんが15番で出ることが多い。1人でゲームを全部つくるのは難しいので、空いているスペースやエリアマネジメントのところはコミュニケーションを取りながら助けてくれている。一番接しやすい先輩ですね。

 ――山中選手から見て李選手は?
 山中 代表でもプレーして自信がついてきて、確実に成長している。21歳でも堂々とコントロールしていて、承信がSOをやっていたら安心感がある。僕が21歳やったら、SOでオールブラックス相手とか絶対に無理。怖くて怖くて(笑い)。気持ちも強い。

 ――話は変わるが、サッカーのW杯は見ていた?
 山中 けっこう見ていました。開幕前まではネガティブな感じで言われていたけど、結果を出した。現場には現場にしか分からないことが絶対にあるし、信じてやってきたこともあると思う。結果が出ているのを見ると“いいチームだな”と。共感できるし、さらに応援したい気持ちが湧いてきた。

 李 自分たちにも分からない、そのチームだけがやってきた準備がある。それが結果に表れると、注目度も上がる。スポーツは違うけど、自分たちも可能性を感じられたというか“自分たちもできるんだ”ということを感じられた。

 ――19年W杯、そしてサッカーW杯のような盛り上がりを起こせるかもしれない。
 山中 起こしたいですよね、やっぱり。絶対、今の代表もそれぐらい力はあるし、信じてやり切っていくこと。自分たちのスタンダードを上げて、W杯までにチームとして成長していきたい。

 李 どれだけいい準備ができるか、だと思う。準備したことが、グラウンドで表現できることだと思うので。W杯を見据えながらも、今できる準備を大切にしたい。

 ――サッカーW杯の日本代表は史上初の8強入りを逃した。ラグビーは前回大会で壁を破った。
 山中 自分自身、そこはあんまり考えていなくて。目の前の相手に勝っていけば、おのずとそこは見えてくると思うので。

 ――山中選手は今年のW杯が最後になると聞いた。集大成の位置付けなのか?
 山中 たぶん、次で終わりです。まあ、絶対に無理なので、4年後は。もうラストですね。それぐらいの気持ちじゃないと必死になれないし、19年もそれぐらい必死で“絶対出る!”という気持ちで一日も無駄にできなかった。もうラストだと思うので。そういう気持ちを持ってやっていきたい。

 李 ヤマさんと一緒で、一戦一戦勝つための準備をして、一戦一戦勝つことで、新しい景色が見えてくる。一戦一戦に集中して戦っていきたい。

(※1)ニュージーランド、イングランド、フランスといった世界最上位に位置する10カ国・地域のこと。

 (※2)昨秋のニュージーランド戦は山中がFBで先発フル出場。李はSO山沢に代わって後半9分から出場し2ゴールを決めた。改築後の国立最多となる6万5188人が観戦。終盤に4点差まで詰め寄る接戦を演じたが、31―38で敗れた。

 (※3)W杯1次リーグでも顔を合わせるイングランドと昨年11月12日にトゥイッケナムで対戦。山中はFBで先発フル出場し、李は後半から出場。試合は13―52で完敗した。

 ◇山中 亮平(やまなか・りょうへい)1988年(昭63)6月22日生まれ、大阪府出身の34歳。真住中2年から競技を始め、東海大仰星(現東海大大阪仰星)、早大を経て13年に神戸製鋼(現神戸)入り。代表歴はU20日本代表、高校日本代表。10年5月8日のアラビアンガルフ戦で初キャップ。19年W杯日本代表。日本代表キャップ27。1メートル88、98キロ。FB。

 ◇李承信(り・すんしん)2001年(平13)1月13日生まれ、兵庫県出身の21歳。4歳の時、兵庫県ラグビースクールで競技を始める。大阪朝鮮高卒業後は一度大学進学するも、より高いステージを目指して20年9月30日に神戸製鋼(現神戸)入り。代表歴はジュニア・ジャパン、U19日本代表。22年6月25日のウルグアイ戦で初キャップ。日本代表キャップ6。1メートル76、85キロ。SO。

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