陸上女子短距離・児玉芽生 さらなる進化求める“はだしのスプリンター”

[ 2022年11月23日 06:00 ]

ミズノのシューズ製作工場で足型を測る児玉
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 【オリンピアンロードの歩き方】五輪を目指すアスリートや関係者らを取り上げるコラムの今回は、陸上女子短距離の児玉芽生(23=ミズノ)。今季、100メートルで日本歴代2位となる11秒24を記録したスプリンターは、はだしでスパイクを履いている。きっかけは先輩の卒論だった。

 靴下を履かずに、児玉はスパイクに足を入れる。きっかけとなったのは、福岡大に通っていた大学2年の頃。今でも指導を仰ぐ信岡沙希重コーチのゼミ生が「スパイクとはだし、どちらで走った方が速いか?」というテーマを卒業論文で扱った。当時、同大陸上部の学生たちが被験者となって、短距離走でタイムを計測した。

 「みんな走ったら、私だけ明らかにはだしの方が速かったんです。ということは、スパイクをうまく使えていないと。それが気付きとヒントになりました」

 はだしで陸上のトラックを走ると「めちゃくちゃ痛いし衝撃もある」という。ただ、その痛みと衝撃が効果を生んでいた。「痛いから、スパイクを履いている時よりも接地時間は短くて。その分、一瞬で大きな力を伝えられるし、しっかり地面をキャッチする」。自分の強みを生かすために「はだし感覚」ではなく「はだし」でスパイクを履くようになった。

 靴下を使用しないことで当初は足に痛みが生じ、夏場には地面からの熱が直接的に伝わってくる。それでも「私に合っている」と継続した。慣れると同時にスピードは増し、今でも走り方のフォームやタイミングがずれてきた時には、感覚を取り戻すためにはだしで調整することがある。

 所属するミズノも児玉をサポートする。「(はだしでスパイクは)ちょっとレアなケース」と語るのは、同社シューズクラフトマンの亀井晶さん。まずは手作業で入念に足型を計測し、希望やこだわりを聞きながら打ち合わせる。「非常にアナログなんですけど、フィッティングを上げれば、パフォーマンスも上がるので」。左足の方が少し甲が高い児玉の特徴などにも合わせ、約2カ月の工程で専用スパイクを作製する。

 今季は100メートルと200メートルともに自己ベストを更新し、100メートルでは福島千里の持つ日本記録まで0秒03差に迫る11秒24をマークした。「来年は日本記録を更新したいし、個人種目で世界陸上に出たい」。向上心たっぷりな“はだしのスプリンター”は、さらなる進化を追い求める。(五輪担当・西海 康平)

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