角界の鉄人、三段目・翔傑が46歳のバースデー。昭和以降3番目の高齢力士に

[ 2022年9月5日 17:44 ]

46歳になっても後輩を圧倒する翔傑(右)
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 現役最年長の東三段目40枚目、翔傑(本名・仲原克明、芝田山部屋)が5日、自身46回目の誕生日を迎え、北斗龍に並ぶ昭和以降3位の高齢力士(46歳0カ月)となった。

 この日は東京都杉並区の芝田山部屋で後輩力士らを相手に勢力的に汗を流した。自身よりひと回り以上も若い力士らを圧倒し、40番近く取るなど約40分もの間、土俵を独占。師匠の芝田山親方(元横綱・大乃国)も「いつもこんな感じ。部屋で一番強いのが翔傑だから」と若々しい姿を称賛した。

 相撲協会によると、昭和以降では今年初場所限りで引退した華咲(51歳7カ月)、一の矢(46歳10カ月)に次ぐ高齢となったが、誇れるのは95年春場所初土俵から28年、163場所連続で休まず土俵に上がり続けていることだ。1448回連続出場で現役1位(歴代4位)の玉鷲はデビューから19年110場所。初土俵から1630連続出場の歴代1位記録を持つ青葉城も23年134場所で翔傑には及ばない。幕下以下は1場所7日しか取らないものの、163場所連続皆勤は立派な大記録だ。

 これまでにも休場の危機はあった。「肉離れなどで力を出せず、師匠(元大関・魁傑)から休めと叱責された。休場届出す寸前だったけど、兄弟子に稽古場で“立っているなら相撲取れる”と言われ、思いとどまった。あそこで休んでいたら今はなかったかも」と振り返る。支えとなっているのは入門時の師匠、先代放駒親方(元大関・魁傑)の教え。「土俵に入ったら出るな、という教えを受けて精進しきた。番数やって自信をつける。それがないと不安という訳でもないけど、その気持ちがあるからこの歳までやれている」。関取が1日20番前後しか申し合いをしない時代で、今でも30~40番は平気で取る。「治療なども(ケアに)行くとつい頼ってしまうからあまりやらない。ケガをしても“だから何だ”という世界で育ってきたし、今の相撲界と真逆のことをやってきました。後輩に足下をすくわれないようなスタンスでいるし、ケガをしないようにと稽古しているから長続きしているのかも。もういいやと思うこともあるけど、気付いたら朝稽古場でバンテージを巻いている。捨てきれないのは(気持ちが)切れていない証拠かとも思う」と話した。

 年齢とともに以前のような強烈なぶちかましで圧倒することは減ったが、「押しだけでは勝てなくなったので、左四つの形にこだわるようになった」と最近は自分の形になるような考えた取り口も試みている。「気持ちばかり先に行くと押し相撲の癖が出てしまう。取り口を替えないといけないとは思っています。以前のようなイケイケでなくなったので落ち着いて土俵には上がれているかな」

 7月の名古屋場所では新型コロナウイルス感染で部屋全体が途中休場。デビュー以来初の“休場扱い“となったが、相撲協会はコロナ関連の休場に関しては連続記録は継続されるという見解を示している。「(コロナ休場が決まり)一瞬、あーこれで終わるんだと放心状態になりました。これも縁の切れ目かと思ったけど、協会の見解は公傷的な扱い。(同じ連続出場記録を更新していた)玉鷲関、錦木関もコロナで休んだので運命的なものも感じました」。自信もコロナに感染しホテルなどで隔離生活を余儀なくされ、10キロくらい体重が落ちたというが、「やる気がないから痩せたとは思われたくないので」と必死の調整で155キロまで回復したという。

 引き際は常に考えているというが、今は部屋のリーダーとして後輩を引っ張っている存在。「ここ1、2年はケガしたら終わりと思っているが弟弟子のことを考えるとね。部屋を引っ張ってくれる人が出てくれば、と思っている。自分を踏み台にしてほしい。自分に踏み台にされていているようではダメだろうと思う」と複雑な心境も明かした。

 164場所目となる秋場所も1週間後に迫ってきた。場所後には単独3位の高齢力士となり、来年名古屋では、一の矢の年齢に並ぶ。「戻れる力があるか分からないけど、ぜひとも幕下に戻ってから、けじめはつけたい。そう思って稽古はしています」。先代、現師匠から厳しく、かつ激しく鍛え上げられて築いた「翔傑魂」は決して時代遅れではない。

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2022年9月5日のニュース