【羽生結弦、語る 会見(8)】「引退でも何でもない」「これからもどうか、応援してやってください」

[ 2022年7月19日 20:51 ]

花束を受けとる羽生結弦(撮影・小海途 良幹)
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 フィギュアスケート男子の羽生結弦(27=ANA)が19日、都内で記者会見を行い、競技の第一線を退き、プロ転向を表明した。14年ソチ、18年平昌と男子では66年ぶりの五輪連覇を達成し、4位だった22年北京ではクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)への挑戦が世界初認定。伝説を刻んできた勝負のリンクに別れを告げた。

【羽生結弦、語る 会見(8)】

 ――プロのアスリートという意味合いと、4回転半への思いとは
 「ありがとうございます。えっとー、正直な話、えー、やっぱアスリート、なんかフィギュアスケートってそんな苦しいところを見せてはいけないっていうふうには自分の中では思ってて。その、演技してるときにめちゃくちゃ頑張ってるんですけど、本当は。で、演技終わった後は、キス&クライとかっていう点数が発表されるところがあったりしてて。で、そこで倒れ込むっていうわけにはいかないんですけど、でも僕ら本当に倒れ込むくらい全力で毎回滑ってます。そういった中でも、なんか、アイスショーってやっぱり華やかな舞台であったりとか、エンターテインメントみたいなイメージがあると思うんですけど、なんかもっともっと僕はアスリートらしくいたいなって。もっともっと難しいことにチャレンジしたりとか、挑戦し続ける姿だったりとか、闘い続ける姿だったりとか、そういったことを皆さんに見ていただきたいなって、期待していただきたいなって思って、えー、今回、この言葉たちを選びました。実際、4回転半に関しては、あの、北京オリンピックで凄く良い体験ができたと思ってますし。実際、あの時はその、痛み止めの注射を打ってしまっているからこそ何も感じなかったからこそ、何も怖くなかったっていうことがあって。なんか本当に全力を出し切って、4回転半に挑むことができたんですけれども、今現在、えー、やっぱり、右足首の回復を待ったりとか、まあ、うーん、あの時は本当に4回転半のためにずっと努力していたと言っても過言ではないので、それと比べたらやっぱり、最近アイスショーがあったりして、4回転半に時間をとる時間がなかったので。あの、あの頃よりはへたくそになっちゃってるかもしれないんですけど、今現在も4回転半の練習を常にやっています。実際に、得た知見があったからこそ、北京オリンピック、そして北京オリンピックの前にもいろんな知見を得られたからこそ、今、今の現段階でも、“あ、もっとこうやればいいんだな”とか、“もっとこうできるんだな”っていう手応えがありますし。また、ここ最近、えー、アイスショーに出させていただいたりとか、そういった中で“こういう視点があったんだな”っていうことも毎日のように発見があって。なんか、そういう意味で、これからさらにうまくなっていけるんだなっていう自分への期待とワクワク感が今ある状態です。実際にはあの頃よりはへたくそになってしまっているかもしれないですけれども、でも、きっと、なんか、北京オリンピックの時はもう伸びしろないのかなって思ったんですけど、今は伸びしろをいっぱい感じてます。期待しててください。ありがとうございます」

 ――ファンはどんな存在だったのか、ファンへのメッセージ。
 「はい、ありがとうございます。えっと、えー、あらためて、ひと言で言うのは難しいんですけれども。やっぱり応援してくださる方がいるから、僕は今ここで話してて、これまでスケートをやってこられて、これからもスケートをさらに突き詰めていこうって思えています。正直、先ほども言ったように、自分が特別な存在とか、自分が特別な力があるとか、そんなことは全く思っていなくて、なんか、人一倍、皆さんに応援していただけるからこそ、力があったりとか、なんか、応援の力があるから、僕はうまくなっているだけなんだなと、凄く思っています。これから、例えば、これがなんか、何だろう、10人くらいにしか応援されていなかったりとかしていたら、きっとその10人の方々の気持ちを受け取るだけでいっぱいっぱいになってしまって、こんなにスケートだけに没頭できる日々はなかったかなと思います。ただ、その中で、皆さんがたくさん期待してくださって、その期待に応えた時に、また、より多くの人が期待をしてくださって、そんな循環が僕は本当に大切だったし、そんな循環をこれからもさらに続けていきたいですし、そうやってまた、皆さんの期待に応えられるような演技を続けていきたいなって思うので。あのー、正直、僕の心の底からの今の気持ちは、どうかこれからも、期待してやってくださいというのと、どうかこれからも、見てやってくださいっていう気持ちが、自分の本音です。なんか、ここでありがとうございましたじゃないっていうのが、正直自分が一番思っていて、全然終わらないので、引退でも何でもないので、ここからさらにうまくなるし、さらに見る価値があるなって思ってもらえる演技をするために努力をしていくので、これからもどうか、応援してやってください。よろしくお願いします。ありがとうございます」

 ――プロアスリートになるに当たり、人生の最優先事項として3つ挙げるとしたら
 「ありがとうございます。3つかあ、難しいな。うおー。3つ…。そうですね、あの、成功させられる努力をまずすること。それが自分にとって一番優先、一番上の優先事項ですかね。それは4回転半も含めて。4回転半も成功させたいし、自分自身が目標としている演技たちだったりとか、まあここであえて演技たちって言っちゃいましたけど、いろんな演技をしていくにあたって、絶対にあの頃よりうまいんだぞって、過去の自分よりうまくなったなと言ってもらえるような、理想とする演技をできるような努力をしていきたい。それが今、一番自分にとっての第一優先のことです。あと2つ、そうですね。えー、うーんと、うわー、難しいな。これはプロになったからとか、そういうのじゃないかもしれないんですけど、人間として美しくありたいって思っています。なんか、言葉で全部表現するのは難しいんですけど、例え明日の自分が自分のことを、今の自分を見たとしても、ちゃんと昨日の自分、頑張ったなと思ってもらえるような自分を常に大切にしていきたいなと思いますし、うーん、なんか、一生胸張って生きられる生き方をしていきたいなと思っています。そして3つめは、うーん、難しいですね。そうですね、うーん、なんかあるかな。あっ、はい、勉強を怠らない、常に勉強し続けることを、3つめに挙げたいなと思います。もちろんスポーツとしてのフィギュアスケートの競技というところからは抜けて、違う新たなステージに、一歩高いところに上がっていくって自分の中では位置付けているんですけれども、これからもずっとずっと勉強していきたいなって思っています。いろんなことを、まあ自分自身、ちょっと最近ダンス、ダンスがうまくなりたいなとか、氷上でうまく使えないかなと思って学んでいたりとか、あとは力学のことだったりとか、運動学だったりとか、人間工学だったりとか、あとはパフォーマンスのどういうふうに見れるとか、どういうふうに評価するのかとか、そういったことも含めて、これからもどんどん勉強して、もどんどん深い人間になっていきたいな、深いフィギュアスケーターになっていきたいと思うので、常に勉強し続けられる、アップデートし続けられる人間になりたいなと思います。ありがとうございます」=おわり=

 ◇羽生 結弦(はにゅう・ゆづる)1994年(平6)12月7日、宮城県仙台市出身の27歳。4歳でフィギュアスケートに出合い、08年に全日本ジュニア選手権で初優勝。全日本選手権は6度制覇、世界選手権で2度の金メダルを獲得し、五輪は14、18年と連覇を達成した。1メートル72。

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