ラグビー代表国が変更可能になる新規定 太平洋諸国の活性化、日本代表への影響は?

[ 2021年11月26日 07:30 ]

19年W杯の日本代表。新規定の影響は?
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 どんな地殻変動をもたらすか。

 国際統括団体ワールドラグビー(WR)が、一定の条件を満たせば選手が一度だけ代表する国・地域を変更できる新たな規定を承認した。条件とは(1)変更先が自身か親、もしくは祖父母の出生国であること、(2)最初に代表となった国・地域での最後の代表活動から36カ月以上が経過していること、の2点。ケースごとに「品位を保つため」、WRの承認が必要というが、よほどの規定乱用でない限り、認められるだろう。

 主に恩恵を受けるとみられるのが、フィジー、トンガ、サモアといった太平洋諸国だ。人材の宝庫である反面、国そのものや経済の規模が小さいゆえに、有望選手はチャンスを求めて10代でニュージーランドやオーストラリアに渡る。(もちろん、日本に来る選手もいる。)実力が認められればそのまま代表になるし、そうした歴史の繰り返しにより、2世、3世たちが代表スコッドで大きな割合を占めている。オールブラックスで最後にプレーしてから3年経過したスター選手が、トンガで次のW杯に出場、というケースが出てくることになる。

 日本時間の24日深夜にWRが発表した直後から、SNS上には「こんな○○代表が実現」との投稿があふれていることが、インパクトの大きさを物語っている。例えばトンガ代表にはオールブラックス通算15キャップのCTBラウマペ、今季からリーグワンの浦安でプレーする元オーストラリア代表のFBフォラウが加わる、といった具合だ。もちろん本人に意思があることが大前提だが、少なくともぱっと見は、ラグビー界の活性化、特に太平洋諸国の活性化につながると考えられる。

 もう一つ注目すべき点が、22年1月1日から適用されること。この手の大きな代表規定の変更は、これまでなら一定の周知期間を設けてから適用されてきた。例えば性質は異なるが、代表に関する継続居住条件が36カ月から60カ月に変更となると発表されたのは17年5月。21年1月1日(当初)の適用まで、3年半以上の期間があった。ところが今回は年明けすぐに適用される。23年W杯の出場権を獲得できていないトンガは、来年の世界最終予選に“ブーストチーム”で出場することが可能となる。

 日本代表への影響は少ないと見られるが、23年W杯は少なからず影響があるかも知れない。同じ1次リーグD組には、サモアが入っているからだ。同じくSNS情報から拝借するが、15年W杯のオールブラックス優勝メンバーでトライ王に輝いたWTBのJ・サベア、同じく王国出身のSOソポアガもサモア代表になる資格があるという。サベアは31歳、ソポアガは30歳。絶頂期は過ぎたかも知れないが、2年後も十分活躍できる年齢。能力の高い選手が集まれば即、チームの総合力も上がる、というほどラグビーは単純ではないが、日本としては少なからず警戒しなければならないだろう。

 WRは今回の規定変更に「選手と世界的な競争力の向上にとって利益となる」と誇らしげだが、負の側面がないとも言い切れない。例えば太平洋諸国各国が持つ育成システムの阻害や崩壊を招かないか。国籍を持たなくても代表資格を得られるのはラグビーが誇る伝統ではあるが、選手と国の結びつきが希薄にならないか。さまざまな期待と不安が入り交じる新規定の推移を、開幕2年を切ったW杯まで注視したい。(記者コラム・阿部 令)

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