男女混合でどう変わる?日本が五輪金メダルを目指すセーリング470級

[ 2021年11月26日 07:40 ]

吉田愛(左)、吉岡美帆組
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 セーリング競技において唯一、日本勢が五輪のメダルを獲得しているクラスが全長470センチの2人乗りヨットで競う470(ヨンナナマル)級だ。適正体重が合計130キロ前後と小柄な日本人の体格に適しており、女子は96年アトランタ大会で重由美子・木下アリーシア組が銀メダル、男子は04年アテネ大会で関一人・轟賢二郎組が銅メダルを手にした。国内では大学生を中心に競技人口が多く、東京五輪女子代表の吉田愛・吉岡美帆(ともにベネッセ)組が18、19年世界選手権で2大会連続の表彰台に立つなど世界と戦えるクラスに位置付けられている。その470級が、24年パリ五輪から男女混合種目となる。

 パリへの再始動となった11月23日までの全日本選手権では、東京五輪男子代表の岡田奎樹(トヨタ自動車東日本)と吉岡が組んで優勝した。元々男女の区別なく争われる競技だが、メダルレースに進んだ上位10艇のうち男子ペアは5艇、女子ペアは1艇、混合ペアは4艇で、2位は男子ペアだったものの3~5位は混合だった。1972年の開催から過去に3度、女子ペアが制した年もあり、ソウル、アトランタ五輪代表で日本セーリング連盟の斎藤愛子氏が「どちらが有利かは性別ではなく、技量が全てを決める」と語るように、体格の差で単純に男子が強いわけではないのがこの競技の面白いところだ。

 470級ではかじ取りとメインセールを操るスキッパー、身体で艇のバランスを取ってジブセールを操作するクルーに役割が分かれ、混合の場合はそれぞれを男女どちらが務めても良い。素人目線では体力勝負のイメージが強いクルーを男子選手が務める方が有利な印象を持つが、日本トップ選手の感覚は三者三様だった。スキッパーの岡田と組み、東京五輪を最後に第一戦から退いた外薗潤平(才全会)は「男子がかじを持つ方(スキッパー)が有利じゃないか」と持論を展開。全日本は指導を兼ねて女子スキッパーと組んだが「追い風の波に乗せる感覚が劣っていると思う部分はある。スピードを出す感覚、スピードが出た時の艇のコントロールは男子の方が良い」とし、「逆にスキッパーが女子でいけるなら僕もパリ目指していたかも…」と冗談交じりに語った。

 一方の岡田は、クルーが全身を使ってヨットを左右に揺らすことで前進するロッキングなど、限定的な場面で男女クルーの差を感じていた。「ボディアクションが必要なところは男性がどうしても有利になる。ロッキングをパワフルにしないといけないところは男性クルーに一気に追いつかれる感覚があった」。それでも他艇以前に自然を相手とする競技なだけに、「ヨットはどちらかというと性格の問題。風の選択の仕方、選択する能力が必要になってくると思うので、男女関係ないのかなと思う」と続けた。

 全日本のメダルレースに進んだ混合4チームの中で唯一の女子スキッパーだった吉田は、「風域の中で良い悪いがある。私が男子スキッパーに勝つためにはパワーの面で重要な風速がある」との考えを示した。強い風域ではセールの出し入れや船をコントロールして安定させるための体力が求められるため、「そこを男子に近付けられれば差がなくなる」と強調。4大会連続五輪出場のベテランはパリ五輪への挑戦を保留していたが、大会後は「ミックスで私が通用するのかを確かめたい気持ちもあって出場して、もっといけるという手応えを感じた。パリに向けて環境が整えばやってみたい」と女子スキッパーとしての自信を見せていた。

 世界的な傾向はまだ見えていないものの、各国が混合の強化をスタートし、強豪の欧州ではトップ選手同士のマッチングを行う国もあるという。パリに向け、日本で男子トップスキッパーの岡田と女子トップクルーの吉岡がペアを結成したことは必然的な流れとも言える。斎藤氏は「日本には小柄で優秀な男子スキッパーが多いことは事実。今後鍵になるのは女子の選手がどこまで伸びるか。女子でスキッパーをやるなら、吉田選手を超えるくらい技量を上げないと同じ土俵には上がれない」とし、強化担当の中村健次コーチは「長丁場になるのでペアの相性も凄く大切」との見方も示した。混合となったことで、悲願の五輪金メダルに日本は近付けるのか。答え合わせの意味でも、3年後のパリの大海原に注目したい。(記者コラム・鳥原 有華)

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