ゴン差し!パラ陸上男子400 佐藤友祈が大会新で金 ゴール直前の逆転、囲碁で鍛えた“観察眼”生きた

[ 2021年8月28日 05:30 ]

東京パラリンピック第4日・陸上 ( 2021年8月27日    国立競技場 )

パラリンピック陸上の男子400メートル、金メダルを獲得しガッツポーズする佐藤(撮影・木村 揚輔)
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 陸上の男子400メートル(車いすT52)で前回大会2位の佐藤友祈(31=モリサワ)が55秒39で制し、金メダルを獲得した。自身の持つ世界記録55秒13に迫る大会新記録の快走で、ゴール直前で逆転した。上与那原(うえよなばる)寛和(50=SMBC日興証券)が3位に入った。

 金を公言しながら銀メダルに終わったリオ大会から5年。過去の自分にけりをつけるようにトラックを激走した。まひが残る左腕で車輪を叩くように回し、ゴール直前でライバルのマーティン(米国)を差し切った。「画面越しにドキドキ、楽しんでもらえたと思います」。表彰式ではプレゼンターを務めた自身のチーム「prier(プリエ)ONE」の名付け親でもある香取慎吾から金メダルを受け取り「イレギュラーで驚きだった。来てくれてうれしかった」と破顔した。

 21歳だった2010年、原因不明の脊髄炎を発症し車いす生活となった。ふさぎ込みがちだったが、12年ロンドン大会で時速30キロ以上で走る車いす選手の活躍で障がい者のイメージが覆った。

 「自分も次の舞台に立って金メダルを獲りたい」と一念発起。すぐさま出場可能な試合を探してエントリーした。競技会では「今度パラリンピックで金メダルを獲る佐藤です」と自己紹介して自分を奮い立たせた。「笑われるかもしれないけど、臆さずに夢を口にしたことで実現ができた」と振り返る。

 父親と妹が全国大会出場経験を持つレスリング一家に育った。小学時代はレスリングに打ち込んだが、全国には届かずに断念。中学では陸上部へ入部したが「部内で最下位を争うレベルの選手だった」。進学した工業高校では正反対の囲碁部でアマ四段になるまでのめり込んだ。相手の裏を読むことが楽しかった。この日も囲碁で養った観察眼で、先行するマーティンのレース展開を分析。「最後は届くと信じていた」と勝ち誇った。

 400メートルの金メダルは1500メートルとの2冠への“布石”にすぎない。29日に行われるレースに向け「世界記録と金メダルは必ず達成する」と断言した。

 ◇佐藤 友祈(さとう・ともき)1989年(平元)9月8日生まれ、静岡県出身の31歳。21歳の時に脊髄の病気を患い、両足と左手が動かなくなり車いす生活に。初出場した16年リオ大会は1500メートル、5000メートルで銀メダル。18年に両種目で世界記録を樹立し、21年にプロ転向した。特技はプーさんの声まね。妻が作るみそ汁(厚揚げ、ホウレンソウ、しらす)が好物。

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