パラ陸上・辻沙絵が女子400メートルで5位 2大会連続表彰台はならずも「持てる力は120%出せた」

[ 2021年8月28日 21:09 ]

東京パラリンピック第5日 陸上 ( 2021年8月28日    国立競技場 )

<パラリンピック陸上女子400メートル(上肢障がいT47)>5位でゴールした辻(撮影・坂田 高浩)
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 女子400メートル(上肢障がいT47)が行われ、16年リオデジャネイロ大会銅メダルの辻沙絵(26=日体大教)は58秒98で5位。2大会連続の表彰台はならなかった。

 「(リオパラから)約5年間、いいことだけではなく、うまくいかない日もあったが、応援してくださる皆様、サポートしてくださる人たちのおかげでこの舞台に立てたことをうれしく思いますし、感謝の気持ちでいっぱいです」と声を震わせながら話した辻。「一生に1度、あるかないかのこの試合で自分の力を出し切りたいなと思っていので、タイムだったり、メダル獲得には及びませんでしたが、今自分の持てる力は120%出せたと思います。最後まであきらめないで走りぬこうと決めていましたし、とにかく無事に最後まで走り終えることができて良かった」と話した。

 初出場で銅メダルを獲得した16年リオ大会から5年。「前回大会はよく分からないまま、勢いでメダルを獲った感じだった。(今回は)成長している部分も感じてきたので、また違う思いもある」。思いをかみ締めてレースに臨んだ。

 先天性の右前腕欠損だった辻は小学5年からハンドボールを始め、日体大2年時の15年2月に陸上に転向。リオ大会で、いきなり表彰台に上がった。しかし、この5年間は、もがき苦しんだ。なかなか自己ベストを更新できないでいた。時には「自分で諦めていた部分があった。何をやってもうまくいかないっていうネガティブな気持ちだった」という。それでも、懸命に練習に取り組んだ。「もう一回、自分を信じてみよう」。課題を明確にして、自ら分析。義手の代わりに160グラムほどの重りを腕につけるなど道具も試行錯誤を重ねた。

 夢舞台を前に手応えをつかんでいた。4月上旬の記録会で58秒61を出し、自身が保持する日本記録を約2年ぶりに更新。さらに、同24日のジャパンパラ大会(香川)で58秒45をマークし、さらに0秒16縮めていた。「長いトンンルを抜けたような気持ち」と弾みをつけて、東京パラに臨んだ。

 「自分で考えながら、与えられた練習だけではなくて、自分で自己決定していることが成長できている」。苦しみを乗り越え、臨んだ大舞台で、今できること表現した。

 ◇辻 沙絵(つじ・さえ)1994年(平6)10月28日生まれ、北海道七飯町出身の26歳。生まれつき右腕の肘から先がない先天性前腕欠損。父親の仕事の関係で小4で函館市に引っ越し、小5でハンドボールを始める。高校は茨城・水海道二高を選び、健常者にまじって活躍。日体大に進学後、15年2月に陸上に転向した。16年リオ大会では400メートルで銅メダルを獲得。

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