パラ競泳・鈴木ガッツ!逆転でパラ金1号 日本勢2大会ぶり 前日の平泳ぎ銅に続いた

[ 2021年8月27日 05:30 ]

東京パラリンピック第3日 競泳男子100メートル自由形(運動機能障がいS4) ( 2021年8月26日    東京アクアティクスセンター )

金メダルを獲得し、雄叫びをあげ、ガッツポーズをする鈴木(撮影・坂田 高浩)
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 競泳の男子100メートル自由形(運動機能障がいS4)は鈴木孝幸(34=ゴールドウイン)が1分21秒58のパラリンピック新記録で優勝し、日本勢では12年ロンドン大会以来2大会ぶりとなる金メダルを獲得した。自身の頂点は08年北京大会以来。前日の50メートル平泳ぎ銅に続いて今大会2個目、通算7個目のメダルを手にした。男子400メートル自由形(視覚障がいS11)の富田宇宙(32=日体大大学院)は銀メダルを獲得した。

 普段はクールな男が珍しく感情を爆発させた。13年ぶりの頂点を確信した鈴木は、左手でガッツポーズして雄叫びを上げた。「(ガッツポーズは)自然に出ましたね。ちょっとやりすぎました」。気恥ずかしげに苦笑いしつつ、「とてもうれしかったです。凄く単純な言葉になってしまうんですけど。タイムにも順位にも満足」と喜びをかみしめた。

 前半から積極的な泳ぎを見せ、トップのイタリア選手と0秒59差の2番手で折り返した。じわじわ差を詰めると、ラスト10メートルで逆転。会心のレースに「テンポを崩さないようにうまく粘れた」とうなずいた。パラリンピックではこの種目でのメダルは自身初。18年のクラス分けの際、自由形が障がいの程度が重いクラスに変更されたことも影響した。

 16年リオ大会では出場4大会目で初めてメダルを逃し、一度は引退も考えた。だが13年から研修で拠点を置いている英国の滞在期間が2年残っており、「そこまでの期間でできることはチャレンジしよう、タイムにつながらなければやめようと開き直った」。映像を分析し、フィジカル面に改善の余地を見いだした。先天性の四肢欠損で両脚がない。沈む下半身の抵抗をなくすために体幹を強化。大学でスポーツマネジメントを学びながら練習に励み、記録が伸びたことで「ようやく目指してみようかなという気持ちになった」と東京に視線を向けた。

 08年以来の表彰台の真ん中で、小さな声で君が代を歌いながら感慨にふけった。年齢を重ねながらも過去の自分を乗り越えて手にした頂点は、「新しい気持ちで金メダルをもらえたような感覚で全く別もの」だった。残る個人3種目もメダルに届く実力を持つ。鈴木の復活の物語は、まだ終わらない。

 ◆鈴木 孝幸(すずき・たかゆき)1987年(昭62)1月23日生まれ、静岡県浜松市出身の34歳。先天性四肢欠損。6歳から水泳を習い始め、高校から競技を本格化。高3で17歳だった04年アテネ大会でパラ初出場を果たし、200メートルメドレーリレーで銀メダル。08年北京大会で50メートル平泳ぎ金。12年ロンドン大会でもメダルを獲得し、今回で5大会連続出場。

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