IOC 国民感情逆なで「緊急事態であってもなくても五輪開催できる」、さらなる反発必至

[ 2021年5月22日 05:30 ]

記者会見する東京五輪・パラリンピック大会組織委の橋本会長。モニター内はIOCのコーツ調整委員長
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 国際オリンピック委員会(IOC)の副会長で、東京五輪の準備状況を監督する調整委員会のジョン・コーツ委員長(71=オーストラリア)が21日、緊急事態宣言下でも大会を開催すると断言した。東京五輪・パラリンピック組織委員会などとの3日間の合同会議後、新型コロナウイルス対策を講じての開催に自信を示した。6月以降への宣言延長が濃厚な状況で、国内外の世論を無視するような発言に、さらなる反発は必至だ。

 会議後の会見でコーツ委員長に「五輪期間中、東京に緊急事態宣言が発令中でも大会は開催するのか?」との質問が飛んだ。オンラインで参加したコーツ委員長は、緊急事態宣言下の今月も東京で5競技のテスト大会が無事に行われたと説明。「質問に対する答えはイエス」と返した。

 この日は政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長が衆院厚生労働委員会で、地域医療体制への負荷を検証して開催可否を判断すべきと考えを述べたばかり。しかし、IOC内では世界各国と比べて感染者数が少ない日本の状況で、なぜ開催できないのかとの意見が根強い。

 コーツ委員長は世界保健機関(WHO)などからアドバイスを受け、大会参加者の行動ルールを定めた「プレーブック」で「安全かつ安心な大会が開催できる」と豪語。「緊急事態宣言下であってもなくてもというアドバイスを頂いている」と続けた。

 この状況で開催する意義について「アスリートが夢を果たせるように。ほとんどの選手にとって一生に一度しかないチャンス」と熱弁を振るい、「一番大事なことは日本国民を守ること。次がアスリートにチャンスを与えることだ」と開催計画に自信を示した。

 大会組織委員会の橋本聖子会長が観客数について「地域医療に支障を来さないとの理解を得られない限り、非常に難しい」と無観客の覚悟を示したように、日本側は世論に神経質になっている。だが、それも意に介さず強行開催を突きつけるIOCの姿勢に、東京五輪への嫌悪感はさらに高まりそうだ。

 ▼スポーツ文化評論家・玉木正之氏 緊急事態宣言下の東京で数百人規模のテスト大会が実施できたことを理由に、数万人規模の五輪も開催できるというコーツ調整委員長の発言は、あまりにも無責任で、あきれかえった。自身の母国オーストラリアでも、同じことが言えるだろうか。2日前にバッハ会長は「日本は逆境に耐え抜く能力を持っている」と空疎な精神論を展開している。彼らの発言によって、五輪離れはますます進むだろう。

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