6・25、仏王者をかけた決勝で進化した松島を見てみたい

[ 2021年5月12日 08:30 ]

松島幸太朗
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 長い長いシーズンの終わりが、ようやく見えてきた。

 昨年9月に開幕したラグビーのフランス1部リーグ「TOP14」も、残るレギュラーシーズンは3節。その後にベスト6によるプレーオフが3週に渡って開催され、6月25日にグランドファイナルを迎える。レギュラーシーズンだけで各チーム26試合と超の付く長丁場。延期により2月20日に開幕したトップリーグが5月23日の決勝で閉幕するのだから、改めてその過酷さに驚かされる。

 19年W杯で目覚ましい活躍を見せ、コロナ禍という二重の困難の中でクレルモンに移籍したFB松島幸太朗も、すっかり15番に定着し、今やチームの中心選手だ。開幕戦でいきなり負傷交代した際は心配したが、復帰すると一度はWTBに回りながらも、15番を再奪取した。

 サントリー時代は「しなやかさ」でディフェンスを抜き去るシーンが多かったが、今はフィジカルレベルが上がり、タックルをはじき飛ばしたり、絡まれても振り切るシーンが目立つ。どこを強化し、何を経験するためにフランスに渡ったのか。安住の地を離れ、新たな挑戦に踏み出した本人の目的がしっかり果たされたシーズンを過ごしているように見える。

 そんな松島だからこそ、SNSによる発信もエッジが効いている。トップリーグの準々決勝1試合がリコーのコロナ禍で中止が決まった5月1日、ツイッターで「これがもし決勝でも中止にするのかな?」と疑問を呈した。当初、有観客で開幕したフランスも、感染状況の悪化により、昨年末には無観客に。それでも原則として試合は中止にならず、延期開催されながらシーズン終盤を迎えた。

 8日に首位トゥールーズに快勝して上り調子のトゥーロンは、延期となっていたモンペリエ戦が中2日となる11日に組み込まれ、その4日後の15日にはクレルモンと対戦する。選手のウェルフェア的には大いに問題がありそうだが、1試合も中止にすることなくシーズンを完遂しようという気概にあふれる世界で生きているゆえ、疑問がわくのは当然かも知れない。

 現状、フランスリーグを日本で視聴する方法は極めて限られている。ファンがその活躍をほとんど目にする機会がないのは残念で仕方ないが、今月末には2年ぶりに日本代表が活動を再開する。松島は6月26日の全英&アイルランド代表ライオンズ戦のために渡英するチームに現地で合流することになるだろうが、7月のアイルランド戦を含め、バージョンアップした「フェラーリ」が見られるのではないか。

 まずはその前に、クレルモンのプレーオフ進出と、松島の活躍に期待したい。初戦が準決勝となる上位2チームに入るのは厳しい状況だが、6位までに入れば、リーグ王者への道はつながる。決勝は6月25日で、その翌日が日本代表でのライオンズ戦。昨年11月、「試合ができること自体が快挙。特別な試合」と語ったように、気持ちは代表ジャージーを選ぶことに傾いているかも知れないが、個人的にはイエローのジャージーで23年W杯のメイン会場でもあるサンドニのピッチに立つ姿を見たい。10カ月もの長いシーズンの末に勝ち取った舞台なら、ライオンズ戦を袖にする価値は十分にあると思うが、ぜいたくな悩みに直面する日は来るだろうか。(阿部 令)

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2021年5月12日のニュース