五輪観客数上限判断「5、6月」「中国からワクチン」バッハ会長発言に聖子会長ら連日困惑

[ 2021年3月12日 05:30 ]

IOC会長選で再選されたバッハ会長(IOC提供)
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 国際オリンピック委員会(IOC)は10日、オンライン形式で開いた総会の第1日で会長選を実施し、唯一立候補したトーマス・バッハ会長(67=ドイツ)を再選した。任期は25年までの4年間。会見したバッハ会長は東京五輪の観客数上限の判断について、5、6月に先送りする可能性を示唆した。同会長は11日の第2日の審議でも中国から新型コロナウイルスのワクチン提供の申し出があったと明かし、大会組織委員会を困惑させた。

 バッハ会長が連日の“サプライズ”を披露した。信任投票で賛成93、反対1、棄権4票と圧倒的な数字で再選を果たした直後の会見で、東京五輪の観客数上限について「決断はできるだけ遅くする必要がある。5月や6月に起きることも考慮して、ドアを開けておく必要がある」と主張。IOCや大会組織委員会などが3日に開いた5者協議では4月中の判断で合意したはずだったが、結論先送りの可能性を示唆した。

 また、11日には組織委が東京五輪の準備状況を報告する直前に、中国オリンピック委員会から東京五輪と22年2月の北京冬季五輪に向け、新型コロナウイルスのワクチンを提供する申し出があったと発言。パラリンピックの選手団も含め「追加接種分の費用はIOCが負担する」と明かして驚かせた。既に中国製ワクチンに関して協定を結んだ国には直接の提供になるという。

 観客数上限については、削減方法や払い戻し手続きの時間を考慮すれば早期の判断が望ましいが、バッハ会長は観客数削減なら収入面で大きな打撃を受ける組織委に配慮し、感染状況の改善を待って決めたい考えとみられる。

 一方で、政府が見送りの方針を固めている海外からの観客受け入れについては「チケットの手配に影響が出る」と合意どおり今月末までに判断する姿勢を見せた。また、ワクチンに関しては「真の五輪精神に基づく申し出に感謝する。東京五輪の安全を確保する新たなマイルストーンになる」と満足そうに話した。

 IOC委員から連日、再選を称賛する声が続出した中、外部からは批判も多い独善的な手法が早速あらわになった。

 《組織委“寝耳に水”》組織委にとっては連日の“寝耳に水”だった。総会でのプレゼン後に会見した武藤敏郎事務総長は、ワクチン提供について「事前に話はなかった」と明かし、「IOCの話なのでコメントする立場にない。ワクチン接種に関しては政府がやっている」と困惑の表情。観客数上限の判断時期についても「東京側からコメントするのは控えた方がいいと思う」としながらも、「5者の間で認識は共有していると理解している」と合意の重要性を強調した。また、橋本聖子会長も海外からの観客受け入れ断念と報じられていることについて「現在も協議中。結論が出たわけではない」と説明に必死だった。聖火リレーがスタートする25日までに5者協議を開き、最終的に決める意向だ。

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