大阪 天日ヘッドコーチ復帰戦飾る 悪性リンパ腫療養、353日ぶりベンチ入り「楽しいんだな、と」

[ 2021年3月4日 05:30 ]

<大阪・信州>試合終了後、ブースターに向けて復帰の挨拶をした大阪・天日謙作ヘッドコーチ
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 プロバスケットボール男子・Bリーグの第25節が各地で行われ、西地区4位の大阪は同地区7位の信州に86―79で勝利し、今季23勝目(17敗)を挙げた。試合前には昨年6月から悪性リンパ腫で療養していた天日謙作ヘッドコーチ(HC=54)の復帰を発表。天日HCは公式戦では昨年3月15日の島根戦以来、353日ぶりにベンチ入り。これまで監督代行として指揮を執っていた竹野明倫アシスタントコーチ(AC=35)とともに選手へ指示を送った。

 誰もが待ち望んでいた瞬間だった。昨年6月から療養していた天日HCが“定位置”でタクトを振った。療養期間も試合の映像をチェックするなど竹野ACを中心にチームとのコミュニケーションは図ってきたが、長年身を置いてきた現場の空気を格別だった。

 「楽しいんだな、と。試合中はゲームに入っていて分からなかったけど、終わってみて“自分はこう仕事をしていたんだなあ”と実感した」

 bjリーグ時代に大阪の初代HCとして3連覇を達成した天日HCは昨季、11年ぶりに大阪に復帰。リーグ戦は途中で打ち切りになったものの、Bリーグ開幕以降、低迷していたチームを西地区2位まで押し上げた。しかし、6月に病気を発症。チームを離れ、治療に専念した。「僕は比較的治療がしんどかった期間が短かったが、病院には僕よりつらい思いをしている人がいっぱいいる。玉入れなんてしていていいのか、社会に貢献できているのか」。つらい時期を乗り越え、思い悩む時もあった。同時に、バスケットボールから距離を置いたことで改めて面白さにも気づいた。「新しいことより、原点に戻ろう。たくさん走っていっぱい点を取るバスケットをしよう」。原点回帰を誓い、コートに立った。

 この日も序盤こそリードを許す苦しい展開だったが、後半は守備から流れを引き寄せると、終盤には速攻でゴールを重ね、逆転勝ち。3点シュート2本を含む11得点、4アシストの活躍で勝利に貢献した伊藤達哉(26)が「天日さんが長い間苦しい思いをして復帰された。勝利をプレゼントできて良かった」と話せば、竹野ACも「勝てて良かった。それ以外にない」と喜んだ。

 今後、天日HCは本拠地のおおきにアリーナ舞洲と、近隣での練習や試合に参加。定期的な通院治療を行いながら活動範囲を広げる予定だという。「今季は試合を見ていて楽しくて良いチームになった」と指揮官は手応えをにじませた。シーズンは残り20試合。初のCS進出を目指すエヴェッサに、最高の追い風が吹き始めた。

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