森会長の“致命的失態”…避けられないイメージダウン、五輪開催の転機になるかもしれない

[ 2021年2月5日 06:00 ]

日本オリンピック委員会の女性理事増員方針を巡る発言について、取材に応じる東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長
Photo By 代表撮影

 【スポニチ本紙・藤山健二編集委員解説】東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の“女性蔑視発言”を聞いて真っ先に頭に浮かんだのは、開催の是非を巡って揺れる東京五輪の決定的な「転機」になるかもしれないということだった。それほど今回の発言の持つ意味は大きい。

 IOCは14年の「アジェンダ2020」で五輪ムーブメントの未来に向けた改革案を示し、その中で最重要課題の一つとして「男女平等の推進」を掲げた。20年に開催されるはずだった東京五輪はIOCの方針に従って女子選手の参加増に努め、各競技で男女混合種目の採用などを積極的に推し進めた。

 その結果、東京五輪に参加する選手の男女比は男子が51・2%、女子が48・8%となり、五輪史上初めて数の上でも「男女平等」が実現するはずだった。よりによってその東京大会の組織委員会のトップが、公然と“女性蔑視”ともとれる発言をしたのだから、国内はもちろんのこと、世界中から批判を浴びるのは当然だろう。

 国民の多くが今夏の開催に対して懐疑的な思いを抱いている中、強気一辺倒の森会長の発言は、そのたびに物議を醸してきた。今回の発言も、ご本人は「何でこんなことぐらいで」と思っているのかもしれない。だが、東京五輪最大のレガシーとなるはずだった「男女平等」の実現を自ら否定する形となった今回の発言は、ご本人が思っている以上に致命的な失態と言っていい。

 当然のことながら、五輪開催への影響は計り知れない。国際的なイメージダウンは避けられないし、対処を誤れば男女差別に厳しい欧米の女子選手たちが、東京大会への参加を拒否する最悪の事態にすらなりかねない。

 この日の会見で森会長は発言を撤回した上で辞任を否定したが、果たしてそれで世界が納得してくれるかどうか。国内外で反発の声が高まれば窮地に追い込まれるのは間違いない。

 ▽アジェンダ2020 IOCのバッハ会長就任後に打ち出され、2014年12月に採択されたオリンピック・ムーブメント改革の方針。40の提言から構成されている。項目の11番目には「男女平等を推進する」と明記。スポーツへの女性の参加と関与や男女混合の団体種目の採用を奨励するとされている。そのほか、項目には「選手への支援を強化する」、「オリンピックの価値に基づく教育を普及させる」などがある。

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2021年2月5日のニュース