ラプターズの渡辺が作り上げた見えにくい好記録 3点シュート阻止のスペシャリスト?
Photo By AP
【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】1996年11月。アリゾナ州フェニックスに本拠を置いているNBAサンズの試合前の個人練習を見ていたことがある。最後にポツンとコートに残って黙々とアシスタントコーチとシューティングを繰り返していたのはエリオット・ペリー。当時27歳で183センチの小柄なサウスポーのガードだった。
彼は11シーズンで7チームを渡り歩いた俗にいうジャーニーマン。しかしディフェンスをつけていないフリーのシュートが次々にリングに吸い込まれるのを見て私は原稿のネタにならないかと思って途中から成功本数を数えていた。左右のコーナー、そして正面…。最後の10分間は3点シュートラインの外側でボールをリリースしていた。
このとき46本中41本を成功した彼の個人成績をチームから与えられていたメディア・ガイドブック(インターネットによるデータ提供のない時代)を見て私は驚いた。確かににその前年に40・7%という高い成功率を残していたが、ペリーは81試合に出場して(先発26試合)、3点シュートは59本しか打っていなかった。1試合に1本さえも放っていなかった計算になる。練習時の成功率が「89%」だったのに…である。
21世紀に入って3点シュートはNBA各チームのノーマルな戦術となった。チームの成功率が30%台の中盤より上であれば、2点を狙うよりむしろシュート1本当たりの得点効率が良いというデータが浸透すると、昔はゴール下だけが“仕事場”だったサイズの大きいセンターもアウトサイドからシュートを打つようになり、そのポジションナンバーから「ストレッチ5」と称されるようにもなった。
今季1試合当たり、最も3点シュートを放っているのはトレイルブレイ―ズで平均42・6本。これは全体のショット数の46%を占めている。オフェンスの2回に1回はラインの外からボールをリリースしている計算。裏を返せば、守る側にしてみると勝つためにはこの“長距離砲”をどうやってつぶしていくかがカギになる。
「CONTEST」という単語がある。日本語でも「コンテスト」。「競争する」「争う」という意味でおなじみだ。ただバスケではシューターに対して手を伸ばし、ジャンプして妨害する行為を指している。試合経験のある方ならわかると思うが、この行為はけっこう骨が折れる。肉体的にも精神的にもだ。なぜならもしボールをはたき落としてブロックショットとなればそれは相手のシュートを防いだという明確な結果をもたらすが、そうでない場合、たとえシュートが外れたとしてもコンテストをしたディフェンダーの功績なのかどうかはわからない。おまけに3点シュートなので相手はリングから離れた位置に立っている。もし流れの中でいったん自陣ペイント内に収縮して入ってしまうと、“現場”に到着するにはエネルギーを必要とするので自分の体力を削り取ることになる。
だからNBAのトップシューターたちはオフェンスでは3点シュートをどんどん放っているが、いざディフェンダーとなるとあまり手を出さない。コンテストをやりすぎると体力を消耗し、自分のシュートの精度を下げてしまうことをわかっているからなのだろう。今季1試合で最も多く3点シュートを放っているのはステフィン・カリー(ウォリアーズ)とC・J・マッカラム(トレイルブレイザーズ)の11・0回だが、試合全体の4分の3に相当する36分平均で、カリーは1・8回しか相手の3点シュートに対しては“戦い”を挑んでいない。得点部門1位のブラドリー・ビール(ウィザーズ)も2・8回。これは決して“罪”なのではなく、チームに貢献するには削らざるをえない不採算部門なのだ。
八村塁(ウィザーズ)は36分換算で4・1回(2点シュートを含めると7・6回)。ドラフト同期で全体トップ指名だったフォワードのザイオン・ウィリアムソン(ペリカンズ)が6・4回(同10・2回)であることを考えるとまだまだ「上」を目指さないといけないだろう。
さて今季15試合以上出場した選手に限定して、36分当たりの3点シュートへの平均コンテスト数を並べてみた。ウィリアムソンは2位。そして前週まで11位、今週は13位に入っているラプターズのベンチ・プレーヤーがいる。平均出場時間は12・6分だが、彼のスタッツは36分に換算すると5・1回(2点シュートを含めると12・4回)。八村をどちらも上回っている。
それが「2―WAY契約」の選手ながら、今やラプターズのローテーションに欠かせない存在となった渡辺雄太。彼のコンテスト回数は、チームではクリス・ブーシェイ(5・6回&17・7回)に次いで2番目となっている。3点シュートの成功率(46・2%)とブロックショットの本数(平均0・7本)も向上しているが、ニック・ナース監督が渡辺の存在を重視しているのは、功績を認めにくい部門で主力選手が避けて通りがちな仕事を日々、ひたすら黙々と続けているその姿なのかもしれない。
バスケのコンテスト。それは人の生き方にも通じるような気もしている。一生懸命やっても評価されないことが多いが、それなくしてゴールにはたどりつけない…。だから数回の努力が報われなかったといってめげてはいけない。結果は山ほどの失敗の中から生まれてくるもの。ラプターズの背番号18には何か教えられるものが多い。
四半世紀もお蔵入りしていたペリーのネタからたどりついた渡辺雄太物語?そう誰にも邪魔をされなければNBA選手の3点シュートの成功率は「89%」だと認識すべきなのだ。だから“ダメモト”であっても相手のシュートにくらいついていかなければならない。相手の視野の中に自分の体のパーツをねじ込まなくてはいけない。なぜ今季リーグ1位のクリッパーズの3点シュートの成功率が42・3%でしかないのか?それは渡辺以外にも黙々とコンテストを挑んでいる選手が各チームに多数いるからだ。
ラプターズは5日(日本時間6日)にネッツと対戦。リーグ屈指のスコアリング・マシン、ケビン・デュラント(32)と、カイリー・アービング(28)とジェームズ・ハーデン(32)という超攻撃型のガード2人との対戦が待っている。ポイントガードからセンターまですべてのポジョシンの選手を守る渡辺にとってこの試合はよりいっそうの「コンテスト」が必要になる正念場となるだろう。
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には7年連続で出場。還暦だった2018年の東京マラソンは4時間39分で完走。
スポーツの2021年2月5日のニュース
-
東京パラ開幕まで200日 競泳エースの木村敬一が金メダル誓う
[ 2021年2月5日 23:04 ] 五輪
-
北島康介さんがプロダンスリーグでゲスト審査員 「超気持ちよかった。何も言えない」名言連発
[ 2021年2月5日 22:11 ] スポーツ
-
寺田明日香、森会長発言に怒り「女性進出が嫌なんだなと感じた」
[ 2021年2月5日 21:04 ] 陸上
-
室伏広治スポーツ庁長官 森会長発言に「我々はすべての女性の味方」
[ 2021年2月5日 20:20 ] 五輪
-
“カツオ”こと松元克央 200メートル自由形V「確実に成長している」先月に日本記録更新
[ 2021年2月5日 18:13 ] 競泳
-
競泳・入江陵介が森会長発言に意見「五輪を控える中で…残念」「広い認識を持っていかないと」
[ 2021年2月5日 18:04 ] 競泳
-
大橋悠依 五輪会場で400メートル個人メドレーV「勝つことが重要なので次につながる」
[ 2021年2月5日 17:36 ] 競泳
-
レイカーズが3連勝 ジェームズ今季2回目のトリプルダブル 通算100回まであと「4」
[ 2021年2月5日 15:13 ] バスケット
-
JOC山下泰裕会長、森喜朗会長の辞任求めず「最後まで全うしていただきたい」
[ 2021年2月5日 13:07 ] 五輪
-
JOC山下泰裕会長、森喜朗会長の発言は「ん?と思った」「指摘する機を逸した」
[ 2021年2月5日 12:37 ] 五輪
-
NBA球宴は3月7日にアトランタで開催 リーグ側と選手会側が合意
[ 2021年2月5日 12:37 ] バスケット
-
横峯さくら「ママでも優勝」 今秋復帰を目指す 第1子誕生を発表
[ 2021年2月5日 12:34 ] ゴルフ
-
SBハーフタイムの主役「ザ・ウィークエンド」が会見 ステージはフィールド外?
[ 2021年2月5日 12:05 ] アメフト
-
日本一曲がらない男 稲森佑貴 ドライバーレッスン【第5回 曲がらないためのグリップ】
[ 2021年2月5日 12:00 ] ゴルフ
-
松山英樹、70位発進「最初からパットが決まってくれなかった」 フェニックス・オープン
[ 2021年2月5日 10:38 ] ゴルフ
-
小平智、21位発進「感触は悪くない」 フェニックス・オープン
[ 2021年2月5日 10:37 ] ゴルフ
-
真冬の鉄人ゴルフ 67人全員“完走” 女子は初出場の伊藤友里恵がV
[ 2021年2月5日 10:11 ] ゴルフ
-
ラプターズの渡辺が作り上げた見えにくい好記録 3点シュート阻止のスペシャリスト?
[ 2021年2月5日 09:31 ] バスケット
-
パラアーチェリー重定知佳 “44年ぶりに車いす選手が全日本出場”に感じた違和感 東京パラまで200日
[ 2021年2月5日 09:19 ] アーチェリー
-
優佳夫人「いろいろありましたが…」復帰の瀬戸をサポート「家族で前向きに進んでいきたい」
[ 2021年2月5日 06:20 ] 競泳
















