エディーHC 23年W杯1次L日本と同組に警戒感「必然。タフな試合になる」

[ 2021年1月7日 05:30 ]

イングランド代表のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ
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 ラグビーの23年W杯フランス大会で、日本と同じ1次リーグD組に入ったイングランド代表のエディー・ジョーンズ・ヘッドコーチ(HC、60)が、6日までにスポニチのインタビューに応じた。15年W杯では日本を率いて歴史的3勝を挙げた名将は鋭い舌鋒(ぜっぽう)でも知られるが、19年W杯で8強入りした古巣に最大級の警戒感を示した。

 ――1次リーグで日本と同組になった。改めて率直な感想は。
 「必然だと感じた。日本への特別な思いはあるが、こういう組み合わせになった以上は、あくまで1つの試合として捉えている。タフな試合になると想定しているし、100%準備をして、当日に挑むだけだ」

 ――なぜ必然だと感じたのか。
 「朝、起きた時に直感した。(来日中で自主隔離中のホテルから)富士山が見えた。快晴で綺麗に見えたので、そうなると感じた。素晴らしいストーリーになると思う」

 ――19年のW杯で日本代表は史上初めて8強入りした。評価は。
 「特に驚きはなかった。強くなっているのは明らかで、ホームアドバンテージも大いにあったと思う。19年と15年のチームには、3つの違いがあった。一つは凄く成熟したチームになっていたこと。例えば田村優の場合、15年は初出場で、その時の経験を生かし、19年は何をするべきか分かっていたし、想定すべきことも分かっていたと思う。松島や(福岡)堅樹も非常に成長していた。2つ目は若手がしっかりと準備されていたこと。スーパーラグビー(SR)を経験し、ハイレベルな試合への耐性が付いていたと思う。3つ目は信じる力が非常に強かった。15年は自分たちを信じ切れていない選手たちもいたように思う。19年は日本が強豪相手に挑む際に、勝てるんだという信念を非常に感じていた。ジェイミー(・ジョセフHC)が素晴らしい仕事をしたと思う」

 ――W杯で日本が見せた戦術はどうか。
 「新しいコーチが就任した場合、チームに馴染むのは時間が掛かるもの。チームがコーチに馴染むのも時間が掛かる。従って最初は勝てなかったりうまくいかないのは普通のこと。ただ、その中でもジェイミーは頭の中で(W杯までの)構想を描いていたと思う。一番成長した部分は、一貫してディフェンスのラインスピードを上げたことだ。ラインスピードを上げることで、ターンオーバーの発生率を高めた。トランジション(攻守交代)ではW杯でベストパフォーマンスをしていたと思う」

 ――トニー・ブラウン・アタックコーチや長谷川慎スクラムコーチの手腕はどうか。
 「ブラウンは革新的で知能が高く、ストラクチャーとアンストラクチャー、両方に長けているコーチだと思う。非常に整備されたアタックを形勢し、各選手の個々の強みをうまく生かしていたと思う。スクラムも良かった。長谷川コーチは(前任コーチの)ダルマゾが築き上げたところから発展させて、選手のスクラムに対するメンタルを変えたと思う。また優秀な若手プロップを手助けして、あのようなスクラムを築いたのではないか」

 ――特に印象に残った選手は誰か。
 「やはり堅樹は特にずば抜けたパフォーマンスをしていたし、大会通じてもトップの左ウイングだったと思う。バックローで際立っていたのが姫野。(日本と対戦した)18年も彼のパフォーマンスに感心したが、体格を生かしてじりじり前に出て行く姿や激しさに感銘を受けた。21年はSRでプレーをする。さらに強化して、パフォーマンスの仕上げをした上で、23年はさらに際だったプレーができるのでは」

 ――5シーズンに渡り、日本選手の成長を促したSRから日本は除外された。その分をどう補完すべきか。
 「2つある。一つはベストプレーヤーに海外でプレーする機会を与えること。15年はリーチやフミ(田中史朗)が海外でプレーした。同様の機会を得て、成長しないといけない。あとは2年後にSRに関連したクロスオーバー(大陸間)のリーグが立ち上がる計画がある。日本もそこに参戦する可能性があるということなので、強化舞台として生かせると思う」

 ――イングランド代表の強化は順調か。
 「調子がいいかどうかは、誰にも分からない未知なこと。従って強化をし続けるだけだ。W杯の決勝に上がったチームは、次の大会で8強以上に上がれないというジンクスもあるので、そういう歴史、前例から学び、チームを再構築しないといけない。また前回大会から23年も出場する選手が少なくなるので、若手の選手に注目している。今年は9人が初キャップを獲得したが、来年の全英&アイルランド代表ライオンズのツアー中は20人が不在になるので、代わりに20人が新たに代表でプレーし、自分たちの力を証明する機会が与えられる。そうした活動で選手層を厚くし、競争率を高める、ハングリー精神をもたらしたい」

 ――課題はあるか。
 「2点ある。まずは選手がプレッシャーに耐えられるか。ニュージーランドに勝てるようなチームは、まずプレッシャーに打ち勝たないといけない。2つ目は適応力だ。強みをどの場面でどう生かすかが大切だ。セットプレーで勝ちにいくことがあれば、ディフェンスやアタックで勝ちに行くこともある。それらを見極め、使い分けられるようにならないといけない」

 ◆エディー・ジョーンズ 1960年1月30日生まれ、オーストラリア・タスマニア州出身の60歳。現役時代はフッカー。96年に東海大でコーチ業を始め、スーパーラグビー・ブランビーズ、オーストラリア代表、トップリーグ・サントリー、日本代表のヘッドコーチなどを歴任。15年W杯後にイングランド代表HCに就任し、19年W杯では準優勝に導いた。母が日系米国人2世で、家族は日本人の妻と1女。

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