OBが語る青学大の不動の原点

[ 2021年1月7日 08:45 ]

第97回箱根駅伝で、総合4位でゴールした青学大・中倉
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 駒大が箱根駅伝のフィニッシュテープを切ってから、5分12秒後。2年連続6度目の箱根路制覇を狙った青学大のフレッシュグリーンのたすきは4位で大手町に帰ってきたが、往路12位からの挽回を考えると復路優勝という青学大の地力が印象に残る形となった。「勝てなかったとしても、崩れることはない」。現在の“強い青山”の原点を知る09年度主将の荒井輔さんは、大会前にそう語っていた。

 荒井さんは09年の33年ぶり箱根出場を1区で経験し、10年には主将として3区を走り41年ぶりのシード権獲得を達成。OBとして見た15年の初優勝は「正直あんなに早く優勝するとは」と笑いつつ、「そのうちするだろうなとは思っていました」という。原晋監督が「ガタガタの激動期」と振り返る当時の4年間に築き上げた不動の礎と指揮官のメソッドがある限り、創部97年目の悲願達成も、冒頭の言葉にも確信があった。

 荒井さんは宮城・利府高3年時、箱根駅伝に出場できる進学先を探していた。もちろん、青学大は原監督が勧誘に来るまで知りもしなかったという。「これから青学は強くなって競技場もできる。一緒に箱根に出よう」「キャンパスライフと箱根という夢の両立ができる」「寮は一人部屋」。原監督にとって3期生となる荒井さんは「監督得意のセールストークに夢を見させられて」進学を決めたが、入学してみると指揮官が交代した時の3、4年生はほとんどが辞めていて「4年生は2人しかいなかった」という。1年目の予選会は16位と惨敗。同学年でインターハイ入賞などの実績がある同期の3人も退部した。

 転機となったのが翌年の主将を務めた桧山雄一郎さんの提案だった。当時の原監督の方針は「実業団のやり方で“強くなりたいと思う選手が自分で管理をして強くなることが正しい”というスタンスだった」。目標管理はしながらも過程は自由主義、寮も本当に一人部屋だった。「でも大学生は言っても学生。大人じゃないし、当時は考え方が甘い選手が多かった」。桧山さんが監督に直談判し、寮は2人部屋、朝練も離れた公園を集合場所として5時半に設定し、門限も厳しくなった。その年の予選会は次点で落ちたものの成長を示し、全員が「学生のレベルの差がある集団はある程度制限しないといけない」と気付いた。

 指揮官も選手たちが自ら気付き、動くことを待っていたのかもしれない。実は、荒井さんが主将になった時、原監督に「寮を一人部屋に戻してください」と言いに行ったことがあるという。荒井さんは笑って振り返る。「もう監督の考え方も変わっていて。“アホか”と返り討ちにされました」。指揮官が求める「自立」と選手に不可欠だった「規律」。2つが噛み合い、本大会出場、シード権獲得につながった。そして今もそれは変わることなく引き継がれている。

 卒業後、JR東日本で実業団ランナーとなった荒井さんは日本選手権1500メートル3位などの結果を残し、15年に現役を引退。数年間は趣味程度に陸上と関わりながら会社員として務め、コロナ下の20年4月にチームメートだった五ケ谷宏司さん(専大卒)とともに子ども向けのランニングスクールを立ち上げた。そこでは原監督就任当時から現在まで徹底されている青学大の「目標管理」が生きているという。「週ごと、月ごとに、例えば翌月の記録会で何秒出すとか具体的な目標を立てて、それに向けてどう練習するか、筋トレなら腹筋の回数まで落とし込む。そうやって論理的に考えられると試合でも外さなかったし、ビジネスマンに必要な能力も養われました」。大崩れしない、外さない。ロジカルに突き詰めた成果が、今の青学大の強みだ。

 かねてから幼少期の指導の必要性を説いていた原監督は、荒井さんが「監督がやろうとしていたことをやろうと思います」と“脱サラ”の相談を持ちかけた際、背中を押すとともに「うちの教え子はみんな独立するなあ、教え方間違ったかな」とうれしそうに笑ったという。起業するOBが多いことは、今の青学大の根源とも言える「自立」が浸透していることの証左かもしれない。今年の箱根駅伝を見た元主将は言う。「復路はさすがでしたね。来年につながる走りでした。また来年、強い青学が見られると思います」。その言葉にもやはり、確信がにじんでいた。(記者コラム・鳥原 有華)

 ◆荒井輔(あらい・たすく)1987年(昭62)4月9日、宮城県仙台市生まれ。三条中―利府高。箱根駅伝は09年1区区間21位、10年は3区区間7位。卒業後JR東日本に所属し、12年の日本選手権で1500メートル3位などの実績を残す。15年に現役引退。20年に年中から小学6年までを中心としたランニングスクール「BEAT AC TOKYO」を立ち上げる。

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