大商大日本拳法部 いざ王座奪回へ 6日に全日本学生選手権開幕
第65回全日本学生拳法選手権大会が6日にエディオンアリーナ大阪で開幕する。学生拳法最高峰と言われる舞台で、王座奪回に燃えるのが大商大の日本拳法部だ。同選手権で2度の優勝を誇る西の名門。世界中が新型コロナウイルスの感染拡大に揺れた今シーズンを熱い戦いで締めくくる。
道場には張り詰めた空気が流れた。熱い息づかい、骨がきしむ音。大会を目前に控えた練習は自然と熱を帯びた。マネジャーを含めた部員16人を束ねるのは大西晴陽主将(4年=大商大堺)。集大成の場にかける意気込みと覚悟を示した。
「当初、この大会も開催されないのではないかと思っていたのですが、開催が決まってモチベーションは上がります。大学生活の締めくくりができる。もちろん、目指すべきところは優勝です」
新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るった2020年。他競技と同様、日本拳法の主要大会も春先から軒並み中止の憂き目に遭った。部活動が再開されたのは9月を過ぎてから。限られた時間で鍛錬を重ねてきた。一度は心が砕けそうになったところに飛び込んできた、大会開催の知らせ。試合ができる喜び、感謝を示す舞台で持てる力をすべて注ぎ込むつもりだ。
日本拳法は、拳技および蹴技のほかに組技(投げ技、関節技)を加えたスポーツ。防具を使用することで被撃傷害をなくす。防具は面、胴、胴当、股当を用い、手にはグローブをつけて試合を行う。その最大の魅力は「安全にフルコンタクトで戦えること」(大西主将)だ。大西は小学校3年生の時に知り合った前田稔輝に憧れ、高校大学と同じ道を歩んできた。先輩の活躍に刺激を受け「大商大のチーム大西として、この大会で爪痕を残したい」と燃えている。
同部は1951年に創部。同選手権で2度の優勝を誇る西の名門だ。ことしは下級生に有望な選手がそろった。その筆頭候補が小土井壱貴(2年=東大阪大柏原)だろう。幼少期から空手とキックボクシングで鍛え、高校から日本拳法の魅力に取りつかれた。昨年、社会人選手も出場する大会で16強入りした実績もある。小土井は「新チームになって初めての大会。前に前に出て食らいつく。重圧をはじき飛ばしたい」と言葉に力を込めた。
身体を鍛えるだけでなく、礼儀礼節を重んじるのが日本拳法というスポーツ。大西主将は「精神的にも強くなったと感じます」と話せば、小土井も「心を落ち着かせることが身についたと思います」と自己分析した。最後の最後に用意された、晴れの舞台。1回戦の相手は慶大に決まった。支えてくれた全ての人に――。両の拳にありったけの力を込めて戦う。
《19年にフェザー級で新人王に輝いた前田稔輝がエール》日本ボクシング界のホープが後輩へ力強いメッセージを寄せた。19年にフェザー級で新人王に輝いた前田稔輝(24=グリーンツダ)は同部出身。デビュー戦から6連勝中の左の強打者は色紙に『好きこそものの上手なれ』としたためた。
「4年間は長いようで一瞬。一日一日、悔いのないよう練習に取り組んでほしい。在学中は苦しい思いも苦労も経験しました。でも、同期や先輩、周囲の方々の尽力もあり、4年間頑張ることができました。本当に良かったなと思います」
大商大堺から15年に大商大へ進学。期待に胸を膨らませた入学直後に“悪夢”が待っていた。不祥事で同部に無期限の活動停止処分が下されたのだ。ただ、どんな試練に直面しても諦めないのが前田の流儀。「どんな環境に置かれても結果を残せるということを証明したかった」。腐ることなく個人練習に励み、社会人大会に出場して技を磨き続けた。
部の活動停止処分が明け、2年生だった16年に日本一に輝き、その名を全国へとどろかせた。6歳から始めた日本拳法。段位は師範レベルの四段だ。「大学で日本拳法のタイトルを獲得してからボクシング界に転向するという目標がありました」。入学前から描いた明確なビジョンを見事に実現させた。
大商大で培った4年間こそ強さの源だ。11月3日に予定されたフェザー級6回戦・大久保海都戦は、京口紘人の新型コロナウイルス感染により流れたが、決戦の日は12月27日に決まった。デビュー戦から7連勝で波乱の20年を締めくくりたい。日本一、その先につながる世界の頂点へ、前田は走り続ける。
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