大坂なおみ 5年連続初戦突破 人種差別との戦いもスタート 決勝まで「7つのマスク、全て見て」

[ 2020年9月2日 05:30 ]

テニス全米オープン第1日 ( 2020年8月31日    ニューヨーク ビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンター )

警官に射殺された黒人女性の名前が入ったマスクを着けてコートに立つ大坂なおみ(AP)
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 8月のツアー再開後初めての4大大会が無観客開催で始まった。女子シングルス1回戦では世界ランキング9位の第4シード、大坂なおみ(22=日清食品)が人種差別に抗議するマスクを着用して登場し、同81位の土居美咲(29=ミキハウス)に6―2、5―7、6―2で勝利した。5年連続の初戦突破で、18年以来2大会ぶりの優勝へ好発進した。2回戦では同74位のカミラ・ジョルジ(28=イタリア)と対戦する。

 大坂が無言の抗議を続けた。入場時「ブレオナ・テーラー」と記された黒いマスクを着用。3月に自宅に押し入ってきた警官に射殺された黒人女性の名前だった。初戦突破後のコートインタビューで「今大会は7つのマスクを準備している。決勝まで勝ち進んで皆さんに全てを見てほしい」と宣言。「7枚では(入れるべき)名前の数に十分じゃないことが悲しい」と表情を曇らせた。

 故障の影響を感じさせなかった。29日のウエスタン・アンド・サザン・オープン決勝を左太腿裏の負傷で棄権。2日間休養して日本人対決を迎えた。凡ミスは相手と同数の38本を数えたが、8度ブレークポイントを握られながら落としたのは2ゲームだけ。逆に11度のブレークポイントで5度ブレークに成功し、勝負どころでギアを上げた。

 土居との対戦はストレート勝ちした16年9月の東レ・パンパシフィック・オープン以来2回目。「彼女はタフな相手。予想通り難しい試合だった」と振り返った。

 ウエスタン・アンド・サザン・オープンでは黒人男性銃撃事件に抗議の意思を示し、一度は準決勝の棄権を表明。その後、大坂に賛同して大会を1日中断した主催者側からの出場要請を受けて撤回した。準決勝には「BLACK LIVES MATTER(黒人の命も大切だ)」と書かれた黒のTシャツ姿で入場。この日のマスクにテーラーさんを選択した理由を「人種差別問題が全米に広がる前の事件で、あまり注目されていなかった。多くの人に関心を持ってもらいたい」と説明した。

 2時間3分の熱戦を制し、5年連続の初戦突破。左太腿裏について「よくなっている。試合中に少し痛みが出たが、回復する時間はある」と語り、視線を上げた。2年ぶりの優勝だけでなく、人種差別への抗議という使命を自らに課した戦い。「4大大会は毎回違うストーリーがある。それを乗り切るかどうか」。7枚のマスクとともに頂点を目指す。

 ▽ブレオナ・テーラーさん射殺事件 米ケンタッキー州で3月、薬物事件の捜索のためアパートに突入した白人警官が就寝中の黒人女性ブレオナ・テーラーさんを射殺した。侵入者と勘違いしたテーラーさんの恋人が発砲したことで、警官は20発以上撃ち、8発がテーラーさんに当たった。5月にミネソタ州で、白人警官が黒人男性ジョージ・フロイドさんの首を膝で押さえつけて死亡させた事件がきっかけで米メディアに取り上げられるようになった。

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