東京パラリンピック開幕“2度目の”1年前 選手たちが感じる今

[ 2020年8月24日 16:11 ]

笑顔を見せるパラカヌーの瀬立モニカ
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 リセットされた時計の針が、再び節目を迎えた。きょう8月24日は、新型コロナウイルスの影響で来夏に延期になった東京パラリンピックの開幕1年前にあたる。前代未聞となる“2度目の”1年前の訪れを、東京パラ内定選手たちはどう思っているのだろうか。

 パラカヌー女子カヤックシングル200メートル(運動機能障がいKL1)で内定の瀬立モニカ(22=江東区協会)は「1年後にやるかやらないかを想像するより、今できることを積み重ねて来年につながると信じてやっていきたい」と前を向く。東京パラの延期を受け、休学していた筑波大に今年4月から復学。緊急事態宣言発令後から約半年間にわたる沖縄・大宜味村での合宿と並行し、オンラインで大学の講義を受講した。本番に向けて艇内で身体を安定させるシートの改良にも果敢に取り組み、さらなる飛躍のために準備を進めている。

 延期決定直後はポジティブに捉えていた瀬立だが、スポーツの国際大会で延期や中止が相次ぎ、来夏の開催に不安を覚えた時期もあったという。選手として、東京都出身者として、開催に対して複雑な思いも抱いた。「自分の練習が果たして、どこにつながっているのか」。目標を立てられない期間がつらかったことを明かしたが、現在は1日や1週間など短いスパンでテーマを設定し、東京パラでの金メダル獲得を見据えている。

 「まずは新型コロナの収束を願うのが1番。その中で落ち着いてみなさんがスポーツを楽しめる状況になったとき、私たちが勇気や感動を与えられるようにすることが使命だと思っています」

 トレードマークの“モニカスマイル”が、東京ではじける日を心待ちにしている。

 パラ競泳男子(視覚障がいS11)で100メートルバタフライ内定の木村敬一(29=東京ガス)は「僕としては節目の感覚は無い」と冷静だ。来年確実に開催されるのか不透明な状況で、「あと1年とかは設けないようにしている。いつ、どんな形で開催されても金メダル獲得を目指してトレーニングしていきたい」と決意した。

 08年北京大会から3大会連続出場で銀3、銅3の6つのメダルを手にするパラ競泳のエースだが、金はいまだ無し。悲願達成のために18年5月から拠点を米国に移し強化を進めてきたが、新型コロナの影響で3月下旬に帰国した。現在米国に戻れるめどは立っておらず、当面は都内で調整を続ける。

 「来年開催できるとなったときは、世界中が元気になろうとしている最中だと思う。世界を動かしているような瞬間が、自分の生まれ育った国で行われるということは誇り高い。日本中が盛り上がり、元気な社会を示せるような瞬間にしたい」

 選手自身も開催に不安を感じる一方、アスリートである以上、前進するしかない。国際大会の日程など先が見えない状況に加え、新型コロナに感染した場合の重症化リスクも懸念されている。これまで以上に険しい獣道を突き進む彼らを、今後も追いかけ続けたい。(記者コラム・小田切 葉月)

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