追悼連載~「コービー激動の41年」その22 激変した立ち位置 敗北からのリスタート
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【高柳昌弥のスポーツ・イン・USA】1997年のスラムダンク・コンテストで優勝すると、コービー・ブライアントへの評価はレギュラー・シーズンとは少し違うものになった。すぐに自身のブランド・シューズでもあった「アディダスKB8」が飛ぶように売れ始める。そしてレイカーズを率いるデル・ハリス監督の起用法も少しずつ変化していった。
3月までの出番は数分間の限定的なものだったが、エディー・ジョーンズとニック・バンエクセルの主力2人が故障で欠場した4月8日のウォリアーズ戦でコービーはチーム最多の24得点をマーク。デレク・フィッシャーの代わりにポイント・ガードまでこなすという大活躍だった。
1996~97年のルーキー・シーズンは71試合に出場し、平均15・5分のプレータイムで7・6得点。チームは56勝26敗で西地区パシフィックの2位だったが、1位スーパーソニックス(現サンダー)とはわずか1ゲーム差。そしてプレ―オフがスタートする。
1回戦の相手はトレイルブレイザーズだった。レイカーズは3勝1敗で勝ったが、唯一の敗戦は第3戦。ただしその試合でコービーはベンチから出場して22得点を挙げた。25歳の先発ガード、ニック・バンエクセルは「彼はいろいろなものを限られた時間の中で生み出していた。果敢に突っ込んでいくこともあったし、反則を誘ってフリースローももらった。20点もリードされてしまった試合だが、そのとき気がついたよ。彼は他の誰よりも負けん気が強いんだとね」と当時を振り返っている。
同じことをハリス監督も感じていた。だからジャズとの西地区準決勝で、それまでまったくやっていなかった采配を見せている。レイカーズはこのシリーズで1勝4敗と苦杯。それでも延長の末に93―98で敗れたソルトレイクシティー(ユタ州)での第5戦で、コービーはマイケル・ジョーダンのような土壇場で全権を任される「Go―to―Guy」に指名されたのである。
場面はシャキール・オニールが6反則で退場したあと87―87で迎えた残り11・3秒でのタイムアウト。ハリス監督はコービー専用のオフェンスを指示した。試合再開直後、他の4選手はコービーとは逆のサイドへ。力だけがものを言う古典的なアイソレーションだった。シリーズの行方を左右する重大局面で1対1を演じたのがレイカーズのルーキー。そしてドリブルしたあとに14フィート(約4・3メートル)のジャンプ・シュートを放った。成功していれば2勝3敗となってシリーズの逆転制覇に希望をつなげる大事なショット。しかし背番号8の放ったシュートはリングに嫌われ、幼いころからあこがれていたマジック・ジョンソンやジョーダンにはなれなかった。
延長ではジャズのパワーフォワード、カール・マローンに翻ろうされて無念の敗北。なぜコービーに最後のショットを委ねたのかという質問に指揮官は「彼の能力はずば抜けているし1対1にも強い。いつだって任せるさ」と答えたが、高卒ルーキーはその期待には応えられなかった。ジャズのポイントガード、ジョン・ストックトンは試合後、「最後にタフなショットを求められて失敗してしまったが、すべてが初体験なんだから仕方がないだろう。彼はまだ若いんだ」と、自分とは17歳も年齢差がある若者を擁護。勝者から見ると、敗者の中に1人だけ輝きを放っていた選手がいたことは確かだった。
ロッカールームに戻ったコービーは自分の椅子に無言で座っていた。チームメートが背中や肩を叩いて慰めてくれたが、視線は宙をさまよっていた。ルーキーのたった1本のシュートで敗れたわけではないが、自分のシュートには納得できなかった。「今に見ていろ…」。敗戦から数時間後、レイカーズは1997年5月13日の午前2時にユタ州ソルトレイクシティーからカリフォルニア州ロサンゼルス空港に到着。その後、コービーは自宅で仮眠をとった。そして夜が明ける。でも休まなかった。2年目のシーズンとリベンジへの「DAY1」は、1日の休養もとらないうちにもう始まっていた。(敬称略・続く)
◆高柳 昌弥(たかやなぎ・まさや)1958年、北九州市出身。上智大卒。ゴルフ、プロ野球、五輪、NFL、NBAなどを担当。NFLスーパーボウルや、マイケル・ジョーダン全盛時のNBAファイナルなどを取材。50歳以上のシニア・バスケの全国大会には一昨年まで8年連続で出場。フルマラソンの自己ベストは2013年東京マラソンの4時間16分。昨年の北九州マラソンは4時間47分で完走。
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