北口榛花 フィンランドで“運命の出会い” 女王は言った「あなたはあなたの投げ方がある」

[ 2020年1月12日 05:00 ]

北口榛花「はるか かなた」(下)

日大のグラウンドでやりを持って笑顔でポーズをとる北口
Photo By スポニチ

 北口は旭川東時代、若い東京五輪代表候補を強化する日本陸連の「ダイヤモンドアスリート」に選ばれた。飛躍を期した進学先は日大。順風満帆…とはいかず、むしろ苦しんだ。1年時は右肘を痛め、試合出場をシーズン中に断念した。

 「やりを長い間投げられない故障は初めて。自分の投げ方なら故障しないと思っていたのに、その自信が崩れてショックでした。冬に練習を始めても腕を振れず、離すだけ。凄いビビってました」

 フォームをつくり直す上で欠かせないコーチが、同時期に大学を去った。支えは大学の先輩たちだったという。

 「私が延々と投げ続けているのを見てくれてアドバイスをくれたり、一緒に練習をしてくれた。それがなかったら、結構、諦めていたかもしれない」

 2、3年時をコーチ不在で過ごした北口。日本記録を2度出した大学最終学年での活躍は、チェコ人コーチの存在なくして語れない。始まりは一昨年11月のフィンランドだ。

 「コーチがいない状況で続けていくにしても知識が足りない、と思って講習会に参加しました。最後の懇親会で、チェコとポーランドのコーチが話しているところに“君、知ってるよ”となぜか呼ばれて。私の試合の動画を見ながら、分析会が始まって…」

 コーチ不在の現状を伝えると、驚かれた。「東京五輪を目指しているんじゃないのか?」「海外ではどんな強い選手であろうとコーチがいるよ」。そんな話をされるうち、聞きたくなった。「頼んだら見てくれますか?」。OKをもらって帰国し、後日、チェコ関係者に連絡を取った。

 「世界記録保持者(バルボラ・シュポタコバ)がチェコの選手と知っていて興味があり、昨年2月に合宿に行くことができました。言われたのはまず、助走の遅さ。上に跳びはねがちで推進力をロスしていると。投げに関しては、上半身のしなりに対して足からの力が伝えられていないと教わりました」

 開かれた扉に積極的に飛び込み、海外拠点を手にした。昨年は冬の2カ月間と夏の3カ月間、チェコに滞在。女王シュポタコバとの合同練習も経験した。

 「以前は他の選手の投げを見ると、自分に乗り移って“癖が強くなってるよ”と言われたり…。でも、コーチ不在の状況が自分で考えることにつながり、ちょっとずつ分かるようになってきた。自分をいろいろ変えるきっかけにもなりました」

 シュポタコバに掛けられた言葉は「あなたはあなたの投げ方がある」。悩み、学び、練習して磨いた「自分」を込めたやりで、新国立競技場の地表を貫く。8月7日、東京五輪女子やり投げ決勝。その日へ真っすぐ進んでいく。=終わり=

続きを表示

2020年1月12日のニュース