挫折から栄光へ NBAウィザーズの八村が歩んだこの1年

[ 2019年12月28日 09:00 ]

NBAデビュー戦でダブルダブルを達成したウィザーズの八村(AP)
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 NBAウィザーズに日本人初のドラフト1巡目指名選手として入団した八村塁(21)のこの1年は「山あり谷あり」の険しい道だった。

 ゴンザガ大で3年生になって初めて先発に昇格した昨季は37試合に出場して平均19・7得点、6・5リバウンドと活躍。しかし2シーズン連続で狙っていたNCAAトーナメントの「ファイナル4」には、その出場権を争っていた西部地区決勝(3月30日)でテキサス工科大に69―75で敗れて、八村の“学生生活”はここでピリオドを打った。

 それでも6月20日に開催されたNBAのドラフトでは全体9番目にウィザーズに指名されて脚光を集め、ここからプロ生活がスタートした。実はこれに先立ってプレーオフに進出できなかった14チームを対象に5月14日に実施されていた上位指名順を決める「ロタリー(抽せんという意味)」で、ウィザーズが持っていたトップ指名の“当選確率”は全体6番目の9%。14個のピンポン球から4個を選んで構成される1000通りの組み合わせ(11、12、13、14の組み合わせは除く)の中で90通りを分配されていたのである。前年の成績(32勝50敗)が30チーム中25位だったためのアドバンテージ。ただし”1等賞”はウィザーズより下で、6%となる60通りしか持っていなかったペリカンズにさらわれてしまった。

 2番目も3番目も外し、最後にたどりついた先が9番目。このロタリーでの運の無さが、八村の運命を変えることになった。

 8月末から9月にかけて行われたW杯中国大会では、「日本人初のNBAドラフト1巡目指名選手」という肩書がついたこともあって大きな期待を背負って試合に臨んだ。しかし予選ラウンドではトルコ、チェコ、米国に3連敗。45―98で完敗した米国戦ではNBAの先輩でもあるキングスのハリソン・バーンズ(27)やセルティクスのジェイレン・ブラウン(23)らに密着マークされてわずか4得点に終わった。順位決定リーグには故障と体調不良を理由に欠場。大会前の強化試合では好成績を残していただけに不本意な内容だったはずだ。

 そんな曲がりくねった道を歩んでたどり着いたのが10月23日にテキサス州ダラスで行われたウィザーズの開幕戦。NBAデビュー戦となった八村は今季好調のマーベリクスを相手に14得点と10リバウンドをマークし、記念すべき初戦でいきなり“ダブルダブル(個人成績2部門に2ケタの数字を残すこと)”を達成して存在感を示した。

 12月1日のクリッパーズ戦では昨季ラプターズをファイナル初優勝に導きMVPにもなったカワイ・レナード(28)らを相手に一歩もひけをとらない大活躍。38分出場して自己最多の30得点を稼いで全米規模の注目を集めた。

 12月16日のピストンズ戦。八村はリバウンド争いの際、チームメートのイサック・ボンガ(20)の左足が股間を直撃してダウン。次戦のブルズ戦を欠場し、開幕から続いていた連続先発出場記録は25試合でストップした。

 それでもそこまで13・9得点、5・8リバウンドをマーク。ペリカンズがトップで指名したデューク大出身の怪物フォワード、ザイオン・ウィリアムソン(19)は膝の故障が長引いてまだNBAデビューを果たせず、NCAAトーナメントの西部地区決勝で八村のいるゴンザガを破ったテキサス工科大の主力ガードでドラフトで6番目に指名されたジャレット・カルバー(20)は40%台にまで低下したフリースローに苦しんでいる。それに比べれば八村は今季の1巡目指名選手の中では、2番目にグリズリーズに指名されたガードのジャー・モラント(20)と同様に活躍している“エリート新人”の1人。まさに日本バスケ界の歴史を書き換える1年となった。 

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