カヌー羽根田卓也「水の呼吸が聞こえる」、見てほしいミリ単位で挑む技術力の高さを

[ 2019年7月30日 10:00 ]

五輪カラーのカヌーを前に笑顔の羽根田卓也(右)と加藤綾子アナウンサー(撮影・吉田 剛)
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 【カトパン突撃!東京五輪伝説の胎動】激流に逆らわず、巧みなテクニックで水を乗りこなす“日本カヌー界のパイオニア”羽根田卓也(32=ミキハウス)。本場のスロバキアでスラローム技術に磨きをかけ「一生に一度の戦い」である東京五輪でメダルを見据えている。加藤綾子アナウンサー(34)の直撃に、荒々しさの裏にある繊細で緻密な競技の面白さや驚きの海外生活まで披露。本音の“ハネタク”トークは必見です!

 ――東京五輪の人工コースがついに完成しました。実際に水に入られた感触は?

 「五輪にふさわしい難易度の高いコースですね。コンパクトで実用的な施設です。複雑な水の流れになっていてパワーよりも繊細な技術やフィーリングが求められる。漕(こ)いでみて嫌な感じはなかった」

 ――東京五輪は特別ですか。

 「4年に一度というより一生に一度の五輪になる。激流にぶつかる迫力とゲートのギリギリを攻めるスリリングさを見てほしい」

 ――あんな激流の中でパドルを漕がずにピタッと1カ所で止まる技術もあるんですね。あれは驚きました。

 「我々がサーフィンと呼んでいる技術です。川のどこにでも止まっていられるわけではない。流れの中に窪(くぼ)みがある。体重移動を使ってうまくやると、そこで止まっていられる」

 ――よく窪みが分かりますね。

 「見ていると分かるんですよ。でも周りからすると不思議みたい。一番大切なのは水の呼吸が聞こえるようになること。それがカヌーの難しいところでもあり、面白いところでもある」

 ――わたしは全く呼吸が聞こえないですね(笑い)。人工コースができたことはどう思われますか?

 「夢のようです。喉から手が出るくらい欲しかった。競技をする上で優先順位第1位。招致決定の時も“東京五輪が来た!”というよりも“やっと人工コースができる”って気持ちでした」

 ――地元で戦うことになりますが、声援は力になりますか?

 「コースに沿って7000人くらいの観客席ができる。コース自体も川幅が広くなくて水面からスタンドまで10メートルもない。これは歓声が耳に飛び込んでくるなという感じです」

 ――大歓声は集中できない?

 「大歓声の中での試合も少ない。スタート地点は1列目の観客と会話ができるくらいの距離。スロバキアの試合で日本人の方々が応援に来てくれた。スタート10秒前は集中したいんですけど、スマホで僕の顔を撮りはじめた。あれはびっくりしましたよ(笑い)」

 ――集中するのも大変ですね(笑い)。イメージトレなど準備は入念にする?

 「試合の時はできるだけ自然体。それまでに十分練習を積んでコースのフィーリングを積み重ねておく。ゲートの位置は試合前日にしか分からない。そこはぶっつけ本番です」

 ――パワーよりもスピードやテクニックが大事?

 「カヌーは逆流してゲートをくぐるとか見た目は荒々しいと思われている。本当はセンチ単位、ミリ単位でアプローチする繊細で緻密な競技。その技術力の高さを見てほしい」

 ――男子ハンマー投げの金メダリストである室伏広治選手とも練習している。効果はありましたか?

 「室伏さんは自身の肉体と生涯をかけて向き合ってきた方なんで刺激になります。パワーを使わずに、いかに力を伝えるかというトレーニング。力をうまく抜くことでケガすることが減りましたね」

 ――ケガは多い?

 「波の流れとか水圧に負けちゃって肩をケガすることがある。脱臼が多かったりします。日々練習で追い込むと骨も変形するので故障はある」

 ――18歳でスロバキアに留学した経験は大きいですか?

 「今年で13年目。高校の時からカヌーのことしか考えていなくて人工コースがある本場のスロバキアへ行く選択肢しかなかった。それが夢だった」

 ――日本に帰りたくて泣いたりはしなかった?

 「そりゃ、しましたよ。最初は環境が悪くてインターネットも通じなかった。近くの公衆電話でコイン入れまくって日本に電話をかけまくってました(笑い)」

――スロバキアの生活は楽しいですか?

 「最初行った地域は日本人がまったくいなかった。それが良い意味で甘えにならずに良かった。食生活も独特で慣れるまで時間がかかった」

 ――日本と違う?

 「主食がじゃがいも。煮込み料理が多い。夜ご飯はほとんど食べない。お昼がメインで合宿の時に夜ご飯に皆が行かなくてショックだった(笑い)」

 ――どのくらいの頻度で日本に戻る?

 「(1年間で)半々くらい。もう独り言も夢もスロバキア語になってます」

 ――オフの過ごし方は?

 「マッサージしたり、とにかくリカバーに徹してます。息抜きはないんですよね、あんまり…ふふふ」

 ――なんですか、その含み笑い。何か隠してますか?

 「あまり弾けないから言いたくないんですけどギターやります」

 ――いい趣味じゃないですか。

 「触るだけでもいい。エレキなので“ギュ~イン”というヤツ。YouTubeでギター動画を見るのが好き。ももいろクローバーZの“サラバ、愛(いと)しき悲しみたちよ”をコピーした動画を見て感動して買いました」

 ――お笑いもよく見る?

 「柳沢慎吾さんが好きですね。去年イベントで一緒になった。好きなネタを伝えると舞台でやって、帰りがけの廊下でも延々とそのネタをやってくれた。一体いつ帰ることができるのかな、とは思いました(笑い)」

 ――女性のタイプは?

 「日本女性がいい。“フーーッ!”って叫ばない人がいい」

 ――そんなパリピみたいな女性の割合は少ないと思いますよ(笑い)。

 ◆羽根田 卓也(はねだ・たくや)1987年(昭62)7月17日生まれ、愛知県豊田市出身の32歳。父親の影響で9歳からカヌーを始める。杜若高3年時に日本選手権を制覇。卒業後に単身スロバキアに渡る。16年にスロバキア・コメニウス大学大学院を卒業。08年北京五輪でスラローム男子カナディアンシングルで14位、12年ロンドン五輪7位、16年リオデジャネイロ五輪では銅メダルを獲得した。1メートル75、70キロ。

 【取材後記】世界レベルを目指し18歳で単身スロバキアに乗り込んだ行動力に驚きました。カヌーはアマ競技で賞金もなく、スポンサー探しも大変な世界。それをやり切るカヌー愛にあふれています。

 「水の呼吸を聞く」とは、どういうことなのか。わたしは小学校時代に水泳をやってましたが、水を使う時は息を止めますから“呼吸”を聞くなんてことはできないですよ。やはり達人の域ですね。

 カヌーは繊細な競技です。そのイメージが伝わらない歯がゆさもあるそうです。念願の人工コースもできた今、メジャースポーツにするにはどうするのか。持ち前のハングリーさで結果を出して“流れ”を変えてほしいですね。(加藤 綾子)

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