日本バスケ界の歴史的“分岐点”と人気漫画「スラムダンク」に運命的な巡り合わせ

[ 2019年2月3日 15:55 ]

日本代表・八村
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 「79―78」

 昨年6月29日、千葉ポートアリーナで開催された男子バスケットボールのW杯アジア予選。日本が、16年リオ五輪4強のオーストラリアを1点差で破る歴史的白星を挙げた。試合直後のアリーナ内のトイレ。興奮冷めやらぬ中、日本協会の東野智弥技術委員長は漫画スラムダンクの作者・井上雄彦氏とばったり顔を合わせた。

 東野技術員長「すごいスコアで決着しましたね」

 井上氏「気が付きましたか」

 日本スポーツ史を語る上で漫画の存在を欠かすことはできない。66年に連載が始まった「巨人の星」は少年に爆発的な人気を博し、巨人V9時代とも重なって競技の裾野を広げた。81年にスタートした「キャプテン翼」はサッカー人気に火を付け、競技人口が飛躍的に増加。海外でも愛され、主人公の「翼」がスペインで「オリベル」、フランスで「オリビエ」などに名前を変えて活躍した。神戸に所属する元スペイン代表MFイニエスタも大ファンで、来日の決断を後押ししたとも言われる。90年に始まったスラムダンクもバスケットボール界に多大な影響を与えた。

 連載開始から30年目にエポックメーカーが誕生する現象がある。「巨人の星」のスタートから30年の95年に野茂英雄が大リーグのドジャースに移籍。トルネード旋風を巻き起こした。「キャプテン翼」から30年の10年にはW杯南アフリカ大会で本田圭佑が躍動。16強進出の立役者となり、世界に名を知らしめた。そして「スラムダンク」から30年の今年は6月のNBAドラフトで、米ゴンザガ大の八村塁が指名される可能性が高い。漫画で競技熱が高まり、長い時を経て成熟。リアルタイムの連載や放映を知らない世代が世界の舞台で活躍している。

 冒頭の「79―78」。この数字はスラムダンクで主人公・桜木花道の所属する湘北高がインターハイで、3連覇中の強豪・山王工高を破った試合と同じスコアだ。日本代表はオーストラリア戦でアジア予選初戦からの連敗を4で止め、その後6連勝。3大会ぶりのW杯出場を懸けて今月21日にイラン、24日にカタールと対戦する。日本バスケットボール界の分岐点として語り継がれる可能性もある大金星が、国民的漫画のハイライトとリンクする運命的な巡り合わせ。W杯中国大会(8月31〜9月15日)、20年東京五輪のビッグイベントを前にAKATSUKI FIVE(日本代表の愛称)の躍進を暗示しているのかもしれない。(記者コラム・木本 新也)

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2019年2月3日のニュース