ジャカルタよりはるかに暑い…東京五輪での暑熱対策、生半可ではダメと再確認

[ 2018年9月3日 11:30 ]

<アジア大会女子マラソン>力走する野上恵子(左)
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 ジャカルタ・アジア大会は2日に閉会式が行われ、16日間にわたる熱戦に幕を下ろした。2年後に控える20年東京五輪をにらみ、選手団は暑熱環境下でのテスト大会と位置付け、対策を行ったマラソンや競歩などで金メダルという成果は挙げた。ただ、東京のそれはジャカルタをはるかに上回ることが予想される。「焼け石に水」だけは避けたいところだが、選手たちを待っていたのは想定外の涼しさだった。

 記者は15日に現地入りして約3週間、主にジャカルタを中心に各競技を取材した。“東京並みに”暑いと思ったのはほんの数日。朝晩は涼しく、日中でも日陰なら快適に過ごせた。記者が20年数年前に少年時代を過ごした日本の夏のようだった。赤道直下ということで身構えていった自分が間抜けに思えるほどだ。

 各競技の選手たちも「思ったより涼しかった」「暑さはそれほどではない」とのコメントが相次いだ。必死でメダルを目指して戦っていた選手には申し訳ないが、暑熱環境のテストとしては、どこか物足りない印象もあった。

 午前6時にスタートしたマラソンは出発時には日差しもそれほどきつくなかったため「頑張れば何とかいけるんじゃないか?」と思わせるくらいの気温と湿度に少しほっとしたくらいだ。(この時点で東京の猛暑を忘れているのだが…)。男子マラソンで優勝した井上大仁(25=MHPS)が日本陸連科学委員会からのアドバイスを参考に、独自のアレンジを行っていた。メッシュ地のシャツに、さらに可能な限りの切れ目を入れて通気性を改良。保冷剤、キャップ、冷水、スペシャルドリンクを詰め込んだ「暑熱対策セット」を後半の給水所に用意し、少しでも暑さによるダメージを防いでいた。8月上旬に都内で行う予定だった暑熱対策のデータ収集合宿では台風の影響で気温が上がらず、想定していたデータが取れなかっただけに、井上ほかマラソン勢や競歩勢のデータが獲れたのは良かった。

 東京で暑熱対策済みの記者にとって、ジャカルタの暑さは拍子抜けしたが、記者席で隣り合わせた地元メディア、取材活動の足として毎日利用したタクシーの運転手からは、日本人と分かると矢継ぎ早に「東京は暑いのか?」「ジャカルタと比べてどうだ?」と東京五輪がらみの質問が必ず飛んだ。赤道直下のインドネシア人からみても東京の暑さは脅威にほかならないらしい。「実際にあの暑さの中でスポーツができるのか?」。その質問には答えを窮し「ジャカルタの方が涼しいよ…」と言葉を濁した。

 結論から言えばジャカルタ・アジア大会は東京五輪の暑熱対策にはならなかった気がする。逆説的だが、赤道直下の国より緯度が高い東京の方が半端なく暑いし、生半可な気持ちではダメだということを再確認することができたことだけが、大きな収穫だったのではないか?(河西 崇)

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2018年9月3日のニュース