IOC苦渋の決断 ロシアのリオ五輪参加は条件付き容認

[ 2016年7月25日 06:24 ]

ロシアのプーチン大統領(右)と話すIOCのバッハ会長(AP)

 国際オリンピック委員会(IOC)は24日、電話による緊急理事会を開き、国ぐるみのドーピング問題が発覚したロシアを8月5日開幕のリオデジャネイロ五輪から全面除外する処分は見送ることを決め、発表した。出場の可否は、厳しい条件をつけた上で、各国際競技連盟(IF)に判断を任せることになった。

 スポーツ大国を締め出し、深刻な亀裂を生むリスクは回避された。IOCのバッハ会長は電話記者会見で「国全体の責任か個人の正義かの判断でバランスを重視した」と説明。ロシア選手団全体に責任を負わせる厳罰を見送り、その競技を統括する各国際競技連盟(IF)に判断を任せる形を取った。スポーツの根幹である競技の公平性と五輪の価値が揺れる事態に、苦渋の判断を下した。

 その上で、厳しいハードルを設けた。国際競技連盟がロシア選手の出場を認める上で、過去にドーピング違反歴がないことや、信用できる国外検査をクリアすることなど厳しい条件を付けた。さらに、出場を受け付けた選手には、追加の競技外検査を義務付けた。

 バッハ会長は「決定に自信を持っている。IOCは個人の権利を尊重し、クリーンな選手を守らなければならない」と語ったが、リオ五輪開幕まで2週間を切った中で個々の選手の出場資格を巡って混乱は必至だ。IFは各選手の過去の検査履歴や、世界反ドーピング機関(WADA)の調査チームが18日に公表した報告書に記載のあった違反について、当該選手が関わっていないか調べなければならない。IOCはロシア陸上界のドーピング問題を内部告発し、国際陸連が国際大会出場を認めた女子中距離のユーリア・ステパノワの五輪参加は認めない方針を決めた。国際陸連が問題発覚への貢献を考慮し国際大会出場を認めたが、IOCは違反歴があることを問題視した形だ。

 WADAの調査チームは18日、14年ソチ冬季五輪などでスポーツ省が主導してロシア選手の禁止薬物使用を隠蔽(いんぺい)する不正があり、夏季五輪の20競技も対象だったと断定した。WADAはリオ五輪からのロシアの除外を検討すべきだとIOCに勧告。IOCは19日の緊急電話理事会で協議したが、潔白な選手の権利を侵害する可能性があることから結論を先送りしていた。

 21日にはロシア陸上チームの五輪参加禁止がスポーツ仲裁裁判所(CAS)の裁定により確定。国際パラリンピック委員会(IPC)は同国の資格停止に向けた手続きを開始していたが、IOCの判断が影響する可能性もある。

 【IOCが付けた主な条件】

 ▼1Fは信用できる国外検査のみを考慮し、各選手の過去のドーピング検査の履歴を調べなければならない。

 ▼1FはWADA調査チームの報告書に記載のあった違反について、選手名の情報をWADAに求める。違反のあった選手の参加は認めない。

 ▼ロシア・オリンピック委員会は過去にドーピング違反で処分を受けた選手はエントリーできない。

 ▼これらの条件を選手が満たし、CASの仲裁人がそれを承認した場合にエントリーを認める。

 ▼エントリーが認められた選手には追加検査を義務付け、受けられない場合は資格を取り消す。

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