3場所連続全勝Vも…白鵬 悔し涙の表彰式

[ 2010年7月26日 06:00 ]

白鵬は土俵下にインタビューで涙を浮かべる

 野球賭博問題で揺れた名古屋場所の千秋楽。横綱・白鵬は結びの一番で把瑠都を上手投げで下し、15日制が定着した1949年夏場所以降では史上初となる3場所連続全勝優勝を決めた。初場所から続く連勝は47となった。日本相撲協会が天皇賜杯授与を自粛した表彰式では号泣。横綱が人目をはばからず涙するという異例の光景に観客席からは大きな拍手が起こった。

【千秋楽取組結果


 国技を支えた男の涙だった。満員の館内で行われた優勝インタビュー。「一番うれしいのは今場所15日間、応援してくれたこと。名古屋の皆さんに感謝です」。白鵬は大粒の涙を流しながら、相撲を見捨てなかったファンに対し感謝の言葉を並べた。そして「こんな場所は2度とない。反省を抱え、前向きに考えていきたい。こういう場所を経験できたので、あらためて頑張りたい」。前に進むことを宣言した。
 15日制以降では最大差となる4勝差をつけての圧倒的な優勝にふさわしくないセレモニーだった。通常、優勝力士には20以上の賞が贈られるため表彰は30分以上かかっていたが、協会が外部の賞を辞退したため、白鵬に授与されたのは賞状と優勝旗のみ。その後、支度部屋で「新潟激励賞」として同県の泉田裕彦知事から県産コシヒカリ600キロの目録を贈られた。表彰式は8分で終了。もちろん天皇賜杯の授与もなかった。「この国の横綱として力士の代表として天皇賜杯はいただけたらなとつくづく思う。国歌が流れて、土俵の上を見たら賜杯がなく、悔しくて…」。ほおをつたったのは悔し涙だった。
 名古屋場所の最後を飾る把瑠都との一番は42秒の大相撲だった。右四つがっぷりの体勢で引きつけ合いを繰り返したが、最後はこん身の上手投げ。館内の「白鵬コール」に応えた。初場所から続く連勝は47。昭和以降では単独3位となる大記録だ。千秋楽結びでの白星は13場所連続。大横綱・双葉山を抜いて史上1位となった。
 育ての親の熊ケ谷親方(元幕内・竹葉山)は「モンゴル人だけど相撲のことを1番に考えている」と話す。場所前には「自分たちの手で国技をつぶす気なのか」と賜杯授与自粛を決めた協会を批判するような発言をして物議を醸したが、それも国技を思う気持ちから。自身も軽微な賭博をやったと協会に上申し、付け人が野球賭博に関与。責任を痛感していた。それでも「何一つとして弱音を吐かなかった」(熊ケ谷親方)という。
 26日には一夜明け会見を行った後、母国モンゴルに凱旋する。3場所連続の15戦全勝は1909年に優勝制度が設定されて以降初の快挙。「やろうと思ってできることじゃないけど、相撲に対する気持ちとか日ごろの努力の結果」と振り返った25歳。賭博問題で揺れる大相撲のことを誰よりも真剣に考えてきた男の本音だった。

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2010年7月26日のニュース