若麒麟が養老金辞退 理事長「当たり前」

[ 2009年2月6日 06:00 ]

尾車親方から謝罪文を受け取る日本相撲協会の武蔵川理事長(左)。右は元若麒麟容疑者の父

 大相撲の元幕内・若麒麟容疑者(25=本名・鈴川真一)が大麻取締法違反(共同所持)で逮捕された件で、日本相撲協会は5日、同容疑者が退職金にあたる養老金の請求を辞退したと発表した。師匠の尾車親方(元大関・琴風)と同容疑者の父・淳一さん(53)が東京・両国国技館を訪れ、武蔵川理事長(元横綱・三重ノ海)に伝えた。2日の理事会で同容疑者を除名とせず解雇処分とした相撲協会は主導権を握れないまま、辞退を受理する形となった。

 元若麒麟容疑者は4日夜、弁護士を通じて尾車親方に養老金辞退の意志を伝えた。弁護士の前で泣きながら書いた手紙には「除名されても仕方ない人間。養老金を頂く気持ちはありません」とつづられていたという。
 この日、地元・兵庫から上京した同容疑者の父・淳一さんは、尾車親方と東京・両国国技館に出向き、武蔵川理事長に手紙を渡した。神妙な表情で受理した理事長は「今回の件ですべての相撲ファンや支えている皆さんを裏切り、大変申し訳なく思います。今後、一層再発防止の強化に努めていきたい」と話した。
 尾車親方によると、元若麒麟容疑者は「解雇」が養老金を受け取れる処分だとは知らなかったという。淳一さんは「本人も十分、反省したうえで辞退した。その気持ちを大切にし、これからの人生頑張ってもらいたい」と話すと、最後は涙を浮かべ「みなさんに大変なことをして、申し訳ありませんでした」と何度も頭を下げた。
 武蔵川理事長は「こういう事件を起こしたのだから、常識的にも辞退するのは当たり前と思う」と語ったが、そもそも、支払いの必要がない「除名」でなく、請求があれば養老金を支払わなければならない「解雇」に決定したのは理事会。尾車親方も「わたしから受け取るなという言い方はどうかな、と思っていた」と明かし、養老金辞退がなければ混乱はさらに大きくなっていた。
 監督官庁トップの塩谷文科相から「軽すぎる」と批判された大甘処分問題は一応、決着した。だが、協会の危機意識の欠如を浮き彫りにしただけに、解雇された場合の退職金規定がない寄付行為の見直しなどで、強い決意を示す必要がありそうだ。

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2009年2月6日のニュース