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ペレとマラドーナの“世界最高のサッカー選手”論争 天国で延長戦へ

[ 2022年12月30日 05:34 ]

05年、自らがパーソナリティを務める「10番の夜」で第1回目のゲストとして登場したペレ氏(右)と対談したマラドーナ氏(AP)
Photo By AP

 サッカーの元ブラジル代表で「王様」として世界中のファンに親しまれてきた往年の名選手ペレ(本名エドソン・アランテス・ド・ナシメント)氏が29日、サンパウロ市内の病院で死去した。82歳だった。

 昨年9月に大腸腫瘍の摘出手術を受け、定期的に化学療法を受けてきたが、11月29日に再入院。今月3日には地元メディアで化学療法を中止し「緩和ケア」に移行したと伝えられたが、家族や病院は否定していた。その一方で21日には病状が進行して腎臓や心臓の機能障害でケアが必要なため、クリスマスを病院で過ごすことが発表され、24日には家族が次々と見舞いのため姿を見せていた。

 ペレ氏のサッカー人生を振り返る上で欠かせないのが、元アルゼンチン代表ディエゴ・マラドーナ氏との「世界最高のサッカー選手は誰か?」という論争だ。

 ペレ氏は17歳で初出場した1958年大会に続き、62年、70年とW杯を個人最多の3度制覇。2020年11月に60歳で亡くなったマラドーナ氏はW杯優勝こそ1986年大会の一度だったが「神の手」「5人抜き」という伝説のゴールで強烈なインパクトを残した。

 国際サッカー連盟(FIFA)は2000年に20世紀最優秀選手を選出。この際に両雄を並び立てる苦肉の策を強いられた。当初は機関誌読者とインターネットの投票合計で1人を選ぶ予定だったが、票数が多いネット投票でマラドーナ氏が53%を超える圧倒的な支持を獲得。2位のペレ氏は19%にとどまった。一方で機関誌投票ではペレ氏が58%、マラドーナ氏は12%だったことからネット票を反映させるのは「公正さを欠く」と判断。特別委員会を設け、専門的な知見を加味し、ペレ氏を最優秀選手とする一方でマラドーナ氏もインターネット選出の最優秀選手とした。

 度重なる麻薬所持やドーピング違反などで問題児となっていたマラドーナ氏の単独受賞を嫌がったFIFAの政治的判断とも言われ、すっきりしない形で落ち着いたが、以前からファンの意見を二分していた論争はさらに過熱。近年はバロンドール(世界最優秀選手)7回受賞のアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(35)や同5回受賞のポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(37)を評価する声もある。

 ペレやマラドーナの全盛期はバロンドールが欧州クラブ所属の欧州国籍選手に限られていた「欧州最優秀選手」だったこともあり、個人表彰での比較は困難。メッシとC・ロナウドがW杯を優勝していないことから同等の評価はできないとの声も多かったが、メッシは今回のW杯カタール大会で優勝した。史上最高の選手をめぐる論争は、マラドーナ氏に続いてペレ氏が亡くなった今後も続くことになりそうだ。

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