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欧州で奮闘U23戦士をスペイン紙記者が斬る 久保&安部、1年延期で得たアドバンテージ

[ 2020年4月9日 09:00 ]

1年延期でどうなるサッカー五輪代表【中】

日本代表のリーダーになれる可能性を秘めるマジョルカ・久保(左) (C)SAFELOCK Entertainment
Photo By 提供写真

 東京五輪でメダルを狙うU―23代表の主要メンバーは欧州でプレーしている。主要リーグは中断しているが、今季の成績、評価はどうか。レアル・マドリード(スペイン1部)からマジョルカ(同)に期限付き移籍したMF久保建英(18)、2月の右太腿手術から復活を目指すバルセロナB(スペイン2部B=実質3部)のMF安部裕葵(21)について、スペイン紙記者がプレーぶりを評価し、東京五輪への展望を寄せた。(取材協力=加藤雅子通信員、江間慎一郎通信員)

 【ディアリオ・デ・マジョルカ紙 アドロベル記者】久保建英はマジョルカに少年としてやって来て、大人として去って行く。控えめなスタートを切った日本人は、大きな飛躍を遂げて主役になった。

 Rマドリードが契約した突出した才能は、誰もが知っていた。モレノ監督はもちろん久保に攻撃で危険な存在となることを期待したが、同時に守備でチームのために犠牲を払うことも求めたため、順応に時間がかかった。

 チームのスタイルに合わせるため、久保は本来のトップ下ではなく、主にサイドでプレーした。攻撃の中心として即興的なプレーができてこそ危険な存在。サイドにいることが久保の自由を妨げているという声が多々あるが、モレノ監督はサイドから中央への動きを望んでいた。久保もそれをよく理解し、中断直前のベティス戦、エイバル戦のゴールで進歩を示していた。

 サイド寄りに変わりはないが、「もっと手助けをしないと」と話した守備を含めてプレーへの関与が増え、同僚がパスを出せる位置に常に顔を出すようになった。Jリーグより数段上のスピードに既に適応し、自分の能力をどう発揮すべきか理解している。マジョルカ島で彼の先発を疑う者はもういない。素晴らしいのはRマドリードから来たからではなく、プレーで認められたことだ。

 東京五輪の延期は、久保と日本代表にとって良いニュースだ。21年夏は久保は20歳になったばかり。来季はRソシエダードが移籍先候補に挙がるが、スペイン1部で2年プレーし、さらに良い選手になっている。ボールを持った際の決断力、特定の場面で神経質になる弱点も改善は可能だ。増える経験で、久保は日本代表の完全なリーダーとなるだろう。(セバスティアン・アドロベル=ディアリオ・デ・マジョルカ紙)

 ◆セバスティアン・アドロベル 1981年生まれ、マジョルカ島出身。カルデナルエレラ大卒。ラ・ボス・デ・バレアレス紙の陸上担当を経て、ディアリオ・デ・マジョルカ紙で06年からマジョルカを担当している。

 【ムンド・デポルティボ紙 マルティネス記者】安部裕葵を本当に必要な選手か疑う声もあった。久保建英を再獲得するという選択肢を捨て(これがクラブの公式見解だ)、代わりに来たのがサポーターにとって見知らぬ選手だった。

 しかし実戦デビューすると、他の選手とは異なるポテンシャルを見せつけた。大胆不敵、勇敢、群を抜く技術。ピミエンタ監督はその才能を見込んで複数の位置で起用し、ついには“偽9番”も務めさせた。そう、トップチームの絶対的エース、メッシのように。

 チームの中心となった安部はスペイン2部Bで最もファウルを受けた選手だった。20試合で4得点。欠けているものがあるとすれば言語だけ。完全にチームに溶け込めた時には、トップチーム昇格も見据えられる活躍ができるだろう。

 2月に右太腿負傷で長期離脱を強いられたことは残念だが、順調に回復している。当初絶望的だった東京五輪は1年延期となったことで出場可能。日本代表にとっても、かけがえのない存在になるはずだ。(フェラン・マルティネス=ムンド・デポルティボ紙)

 ◆フェラン・マルティネス 1985年生まれ、バルセロナ・テラサ出身。スペイン主要スポーツ紙ムンド・デポルティボに入社し10年目。名門バルセロナのトップチームだけでなく下部組織も熱心に取材している。

 《中山 巻き返した》U―23代表主将を務めるDF中山は、シーズン後半に巻き返しを見せた。当時J2だった柏から加入し、2年目の今季は開幕直後に負傷離脱。前半戦は17試合中6試合の先発出場に終わったが、年明けからはセンターバックの定位置をつかみとり、第19節から7試合連続先発出場を果たした。来年に延期された東京五輪に向けて、先月25日には自身のインスタグラムで「“チーム・個人としての準備期間が得られた”とも思っています」と、前向きに捉えていた。

 《冨安 確かな足跡》DF冨安は今季、初挑戦したイタリアで確かな足跡を残している。シントトロイデン(ベルギー)から移籍後すぐにレギュラーを奪取。先発出場した20試合中19試合はフル出場だった。本職はセンターバックだが、ボローニャでは右サイドバックを務めるなど、適応能力の高さも光る。好調だっただけに延期された東京五輪について、今月3日のインスタライブで「シンプルに残念な気持ちが強い」と話していた。

 《堂安 新天地苦戦》MF堂安は新天地で苦戦を強いられた。シーズン序盤こそ先発として出場機会を勝ち取ったが、中盤からはオランダ屈指の名門の激しい定位置争いに苦闘。試合終了間際での出場が増え、中断前最後となった3月8日の古巣フローニンゲン戦まで約3カ月間、先発出場はなかった。昨夏入団会見で「目標は2桁得点」と意気込んでいたが、現在3得点にとどまっている。

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