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重圧感じず楽しめ!元10番・名波氏が香川にアドバイス

[ 2011年1月15日 10:17 ]

<日本・シリア>前半、前線にパスを送る内田

アジア杯1次リーグB組 日本2―1シリア 

(1月13日
 カタール・ドーハ)
 【名波浩の蹴点】日本代表は13日のシリア戦に2―1で勝利を収め、1次リーグ突破に前進した。格下相手にドロー発進となった9日の初戦ヨルダン戦と全く同じ先発布陣で臨んだアルベルト・ザッケローニ監督(57)の采配や、前線の4人のプレー内容はどうだったのか。テレビ朝日の解説者で現地で日本代表を密着取材している00年アジア杯レバノン大会MVPの元日本代表MF名波浩氏(38)が分析した。

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 前線の4人の連係はヨルダン戦に比べて飛躍的に良くなっていた。松井のダイナミックな動きだしによってできたスペースに本田圭、香川らが次々に入り込み、ポジションにとらわれない流動的な攻撃ができていた。細かいミスもありパーフェクトとはいえないかもしれないが、ザッケローニ監督が目指す日本のサッカーが随所に出た試合だった。

 今大会2試合目で試合勘が戻り、選手同士の距離感が良くなったことが、チームの復調の最大の要因。先制点のシーンは本田圭が右サイドに流れたプレーを起点に生まれたが、これも初戦では見られなかった決断だった。遠藤、長谷部のダブルボランチが効果的な縦パスなどで前線の4人をコントロールしていたことも見逃してはいけない。

 ザッケローニ監督の采配も光った。先発は、決して良い内容とは言えなかった初戦と全く同じ布陣。ヨルダン戦では松井に代えて岡崎を投入し、トップ下に香川、右MFに本田圭を配置した後半13分以降に試合内容が良くなっただけに、シリア戦はスタートから香川をトップ下で起用することも考えられた。だが、ザック監督は我慢して試合を重ねることで連係面が改善される自信があったのだろう。岡崎を切り札としてベンチに置いておきたかった意図もあったかもしれない。

 後半20分に岡崎を投入した際に香川を代えた決断もさすがだ。過去の例からいうと松井を代えそうな場面だったが、シリア戦の松井は守備面の運動量が豊富で貢献度は高かった。一方の香川はビルドアップの場面で危険なボールの奪われ方をするなど精彩を欠いた。岡崎を右MFに入れることで、守備の負担が減った右サイドバックの内田の攻撃参加が増え、チームにリズムが出た。退場者が出て10人になった後、4バックのバランスを崩さずに速攻狙いに切り替えた采配もはまった。

 明らかな誤審もありタフな試合となったが、日本の選手がそれ以上のタフさを見せた試合。あとは香川が復調すればチームはもっと良くなる。今の香川は相手にボールをさらしすぎている印象があり、ファーストタッチのミスも多い。10番を背負う重圧もあり、ドルトムントでプレーしている時よりも小さく見える。10番をつけると「MFの香川」ではなく「10番の香川」として見られる。このプレッシャーは10番をつけた人間にしか分からない。僕も現役時代に10番をつけて叩かれまくったし「10番を着たくない」と言い続けていた。香川には重圧を感じずに楽しんでプレーする原点に戻ってほしい。

 17日に対戦するサウジアラビアは1次リーグ敗退が決まったが、日本戦にはメンバーを落とすことなく本気で臨んでくると思う。アジア杯で最多タイの3回の優勝を誇る強豪がふがいない試合を続けているだけに、最後は意地を見せてくるはず。日本は厳しい試合を勝ち一丸ムードも高まっているだけに、チームとして一皮むけた姿を見せてほしい。

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2011年1月15日のニュース