【菊花賞】ヴェロックス95点 最高峰で輝く持久力型の“絶対美”

[ 2019年10月16日 05:30 ]

<菊花賞>完璧なボディーバランスのヴェロックス(撮影・亀井 直樹)
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 3歳クラシック最終戦は1強ボディー。最も美しいステイヤーが3冠レースを締めくくる。鈴木康弘元調教師(75)がG1有力馬の馬体を診断する「達眼」。菊花賞(20日、京都)ではヴェロックスを1位指名した。スプリンターズSに続き秋華賞もズバリ的中した達眼。その確かな眼力が捉えたのは持久力型の美しすぎるボディーバランスだ。 菊花賞

 容姿の美しさを競う馬のミスコン(ミスターコンテスト)が開催されるとすれば優勝するのは…。オランダ北部が原産地とされる「世界一美しい品種」フリージアンが最有力候補でしょう。つややかな黒いたてがみをなびかせた気品あふれる青毛のたたずまい。筋骨隆々な肢体とりりしい顔立ちはまるで古代ギリシアの彫像です。第1次大戦直前に消滅しかかりましたが、その後、復活。現在は欧州全域、北米、オセアニアで飼育されている中間種です。

 中央アジアに分布している「黄金の馬」アハルテケを優勝候補に挙げる向きもあるでしょう。メタリックな光沢を放つトルクメニスタン原産の軽種馬。薄い皮膚と長い胴、滑らかに傾斜した肩に特徴があります。サラブレッドよりひと回り小ぶりなバランスの整った体躯(く)。とても持久力に優れた品種です。

 ヴェロックスはフリージアンの凜(りん)としたたたずまいとアハルテケの均整の取れた持久力型の体を持つサラブレッド。思わずため息が漏れるほど美しい。「美は余分なものの浄化である」。ルネサンス期の彫刻家ミケランジェロの名言を体現するように、ぜい肉をそぎ落とした完璧なボディーバランス。首から背中、トモにかけて流麗な輪郭を描き、絶妙な角度の飛節と球節がトモのパワーを蹄に余すところなく伝えています。大きなストライドを生む寝肩。突出した部位こそ見当たりません。全てが優秀だからです。引き締まった腹には十分な長さがある。胴がスラリとした長距離体形です。

 初めて経験する3000メートル戦。バランスを欠いた部位があればその箇所に疲労やダメージが蓄積するのですが、これだけバランス良くリンクしていれば疲労を分散できます。ダービー時の写真と細部を比較しても変化なし。ひと夏越してもアハルテケのようなボディーバランスには1点の欠落もありません。

 その一方、立ち方にはひと夏越しての変化が見て取れます。ダービー時よりも重心を少しだけ前にかけながら気持ち良く立っている。やる気を伝える四肢の負重。それでいて、ハミの取り方は春同様に穏やか。落ち着きの中に闘志が乗った精神状態がうかがえます。ダービー時には「皐月賞から400メートル延びる2冠目の舞台は合っています」と書きました。さらに600メートル延びる3冠目の舞台はもっと合っている。

 「美は幸福を約束する」と言ったのは文豪のスタンダールだったか。容姿の美しさを競うサラブレッドのコンテストが開催されるとすれば、優勝はヴェロックス。長距離の持久力を競うコンテストでも最有力候補です。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の75歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。今春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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