JRA禁止薬物波紋 宝塚記念に影響も 出走予定馬は血液検査

[ 2019年6月16日 05:30 ]

東京3Rで3頭の競走除外を知らせるターフビジョン(撮影・西川祐介)
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 日本中央競馬会(JRA)は15日、興奮作用や強心作用のある禁止薬物「テオブロミン」を含む飼料添加物を摂取した可能性のある馬がいたため、15、16日に東京、阪神、函館の各競馬場で行われるレースからの除外を正式発表した。両日には983頭が出走予定だった中、競走除外は156頭にのぼる異例の規模。引き続き16日も中央競馬は予定通り開催されるが、波紋は各方面に広がっている。

 開催3会場全てで行われた説明会が、事態の大きさを物語っていた。阪神競馬場では伊藤忍裁決委員が「14日午後4時ごろ、複数の厩舎から、業者が飼料の添加物に禁止薬物が混入していたので回収したいと言ってきているが、どうしたらいいか、と相談があった。156頭については14日中に検査ができなかったので、競走の公平を確保するため競走除外とした」と説明。内訳は15日は東京が13頭、阪神が30頭、函館が29頭の計72頭、16日は東京15頭、阪神40頭、函館29頭の計84頭。16日の函館スプリントS(G3)は6頭が除外となり、7頭立てで行われる。15日朝の発表となったことには、JRAに報告があった14日夕、役職員の多くはレース開催のため既に移動中だったことから、厩舎関係者との連絡、対応策を練るのに時間がかかったとした。

 競走馬理化学研究所の検査では、該当馬が摂取した飼料添加物「グリーンカル」(商品名)から禁止薬物テオブロミンが検出された。テオブロミンはチョコレートやココアなどに含まれる成分で、気管支拡張作用や強心作用を持ち、一時的に競走馬の能力を高める可能性がある。厩舎のほとんどがJRAの関連会社JRAファシリティーズから購入している。16日の「ユニコーンS」(東京、G3)で競走除外となったサトノギャロスを管理する西園師は「厩舎を開業した時から使っているものだし、今までも検査で一度も引っかかっていない。どこでどうなったのか…」とやり切れない表情を浮かべた。新製品に替える際は業者が持ち込んだ釜ごと検査する規則になっているが、伊藤委員は「業者には検査済みの飼料を納入するよう指導しているが、今回の納入された製品の中に検査前のものがあったと思われる」と話した。04年にもテオブロミンが含まれた飼料が販売されたことがあるが、当時は大井競馬が中止となる中で、JRAは全頭が陰性との検査結果から予定通り開催した。

 当該のグリーンカルは美浦で6厩舎、栗東で22厩舎が使用していた。これらの厩舎で上半期最後のG1「宝塚記念」(23日、阪神)を含む来週に出走を予定している馬には、16日までに血液検査を行い、「陰性なら現時点で(出走に)問題はない」との見解を示した。一方、代謝により10日間で検出がなくなるため、再来週以降の出走予定馬についての検査は行わない方針。

 ◆グリーンカル アミノ酸、亜鉛、マグネシウム、ビタミンA・D3・E、乳糖を添加した粉末カルシウムサプリメント。1日の摂取量は100グラムとされる。

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