【王将戦】谷川浩司17世名人 第3局解説&第4局展望 菅井八段の飛車銀“つんのめらせた”7四歩

[ 2024年2月7日 04:55 ]

6日組谷川EYE A図(36手目)
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 【谷川EYE】王将4期の谷川浩司17世名人(61)が第3局を解説するとともに第4局を展望した。第3局の戦型は16度目の対戦で初となる菅井竜也八段の向かい飛車。藤井聡太王将がその攻めを呼び込む、反発の好手、36手目△7四歩(A図)でリードを奪い、開幕3連勝した。タイトル初挑戦から失敗なしのまま大山康晴15世名人を抜く歴代1位、タイトル戦20連覇へ王手をかける現状に「藤井王将より上の世代にも奮起してほしい」とハッパをかけた。

 藤井将棋の魅力といえば、驚くような捨て駒も飛び出す正確無比な寄せ、AI超えの攻めの鋭さだろうが、受けの強さでもファンをうならせる。谷川が挙げた第3局のこの一手は△7四歩。角交換の後、向かい飛車から三間へ振り直し、飛車銀の攻めで7筋突破を狙った菅井の思惑を見透かしたような軽妙な一手だった。

 △7四歩をどう表現すればいいだろう。飛車銀という巨漢力士の足元へ、歩という小兵が蹴手繰りを入れて前へつんのめらせたようなイメージだろうか。▲同銀と取らせた効果でその銀の活用法が難しくなった。ひとマス前進しただけで攻め駒が渋滞。その37手目から73手目▲6三同銀成で藤井の金と交換するまでお荷物状態だった。対して藤井は38手目△8六歩からと金づくりに成功する。

 しかも考慮時間わずか5分。「大きな勝負どころなので5分というのはそれよりもっと前に成立すると読み切っていたのでしょう」。23手目▲2二角成に△同王が37分。これが△7四歩までの最長考慮だったため「そのあたりで考えていたのではないでしょうか」。12手前からの読み筋だったからこそ5分で指せたとの見立てだった。

 終局後、「うっかりしていた」と藤井が告白した56手目△7五歩。自陣から4手を費やして成った8七とが5手後、対価なく取られてしまった。そのうっかり度合いを「年に2、3回もない」レアケースだと自ら表現した。

 ところが谷川は「私は読み筋で指したのかと思いました」と問題視しなかった。藤井は直後、馬で菅井飛車と交換。「致命的でもなく、難しくなった程度。飛車角交換ですからリードは保っています」。読みになかっただけで、形勢を損ねるまでには至らなかったと分析した。

 藤井が大山超えのタイトル戦20連覇へ早くも王手をかけた。藤井の名誉は競争相手の不名誉。「上の世代に何とかしてほしい。伊藤七段、藤本四段に期待しないといけないようではさみしい」。昨年の竜王戦、そして藤井にとって棋士人生初の持将棋でも話題を集めた4日の棋王戦第1局の対戦相手、同学年の伊藤匠七段。18歳で藤井に次ぐ今年度勝率・851(40勝7敗)を誇る藤本渚四段。両者の活躍は目覚ましいが、指し盛りの20代後半から30代前半の棋士へ改めて奮起を促した。(構成・筒崎 嘉一)

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