スクリーンの中に永遠に残る谷村新司さんの名曲

[ 2023年10月19日 16:50 ]

09年のNHK紅白歌合戦で、「チャンピオン」を熱唱した「アリス」の谷村新司さん
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 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】筆者が高校生だった1970年代後半のこと。故郷の北海道東部には確かニッポン放送も文化放送も電波が届いていなかった。小遣いを貯めて買い求めたソニーのスカイセンサーをいじくり回して聞き耳を立てたことを覚えている。当時、高性能ラジオとして人気だった機器だ。

 受験勉強のお供だったラジオの深夜番組。たとえ雑音混じりでも聞きたかったのが文化放送の「谷村新司・ばんばひろふみのセイ!ヤング」。とりわけ「天才・秀才・バカ」コーナーの「大受・黒姫山・荒瀬シリーズ」には腹を抱えて笑った。

 「チンペイ」の愛称で親しまれた谷村新司さんの悲報が16日に飛び込んできた。享年74。8日に亡くなり、近親者で葬儀を済ませてから所属事務所の発表となった。

 堀内孝雄(73)、矢沢透(74)との3人組フォークグループ「アリス」で活躍し、「昴―すばる―」や山口百恵さんに提供した「いい日旅立ち」など生み出した名曲は数知れず。中国でも人気を誇った日本を代表する歌手だった。

 谷村さんの楽曲は多くの映画も彩った。1978年公開の日活「帰らざる日々」は忘れられない。キャバレーでボーイをしながら作家を目指す青年の高校時代の青春を描いた藤田敏八監督の秀作。永島敏行(66)、江藤潤(71)、竹田かほり(65)らの若々しい演技がまぶしく、谷村さんの歌声がまた見事に後押しした。アリスの76年の楽曲を主題歌に起用した藤田監督のヒットだった。

 1981年には東宝「連合艦隊」(監督松林宗恵)のために「群青」を書き下ろした。91年公開の「動天」(監督舛田利雄)にも同タイトルの主題歌を提供。日本の開国に貢献した商人の姿を描いた作品で、北大路欣也(80)や黒木瞳(63)が出演。琵琶湖のほとりにセットを建てて大がかりな撮影が行われ、取材に出向いたのも懐かしい思い出だ。

 俳優の津川雅彦さんが「マキノ雅彦」の名でメガホンを取り、2009年に発表した「旭山動物園物語 ペンギンが空を飛ぶ」に使われたのは「夢になりたい」という曲。津川さんが「映画作りを教えてくれたハリウッドに“ありがとう”と言おうよ」のコンセプトで90年に北島三郎(87)や奥田瑛二(73)らと結成した「サンクスの会」のために書き下ろした作品を歌詞を替えて、西田敏行(75)と録音し直し、津川監督を感激させた。

 佐々部清監督が4度のがん手術を受けた夫と、若年性アルツハイマー病を発症した妻の絆を描いた「八重子のハミング」(17年公開)には劇中歌に「昴」、エンディング曲に「いい日旅立ち」が使われ、監督はエンディングロールに「スペシャルサンクス」のクレジットとともに谷村さんへの感謝の思いを伝えた。
 名曲の数々は映画の中にも永遠に残っていく。

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